ソーニャ、ゾルゲが愛した工作員 ベン・マッキンタイアー(著)、小林朋則(翻訳) 中央公論新社 (2022/2/21) 3,190円

上海で情報員リヒャルト・ゾルゲにスカウトされたことを契機に、第二次世界大戦を挟んで20年間、ソ連軍の情報機関で活動していた工作員「ソーニャ」ことウルズラ・クチンスキーの生涯を描いた歴史ノンフィクション。

著名なスパイ事件にかかわりながらも逮捕や粛清をまぬかれたことから、「ゾルゲ以上の諜報員」などと評されもする彼女の本格的な伝記である。

ウルズラの活動は地道な通信業務が中心ながら、その日々は複雑な人間ドラマやスパイの葛藤――夫や愛人たちとの奇妙な関係や、母親の感情より共産主義者の使命を優先させたことへの罪悪感(それぞれ父親の違う3人の子あり)――に彩られ、1920年代のドイツ、30年代の上海の活写とともに大いに興を誘う。

英米の原爆開発計画をモスクワに伝え、尋問を試みたMI5に「非常に手ごわい相手」と言わしめた女性スパイの真実とは――。

著者について
ベン・マッキンタイアー
Ben Macintyre
イギリスの新聞タイムズでコラムニスト・副主筆を務め、同紙の海外特派員としてニューヨーク、パリ、ワシントンでの駐在経験も持つ。ベストセラー『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』をはじめ、『英国二重スパイ・システム ノルマンディー上陸を支えた欺瞞作戦』『キム・フィルビー かくも親密な裏切り』(以上いずれも小林朋則訳、中央公論新社)など諜報戦を追った著作に定評がある。『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』(小林朋則訳・中公文庫)は映画化もされた。

小林朋則
翻訳家。筑波大学人文学類卒。主な訳書に、アームストロング『イスラームの歴史』(中公新書)、DK社編著『ヴィジュアル歴史百科』、バズビーとラトランド『ウマの博物図鑑』(以上、原書房)など。新潟県加茂市在住。


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