灼熱の夏、彼女はなぜ、幼な子二人をマンションに置き去りにしたのか。
追い詰められた母親。死に行く子供たち。
無力な受難者の心の内は、小説でしか描けない。
痛ましい事件の深層に、何があったのか。
本当に罪深いのは誰――
虐げられる者たちの心理に深く分け入る迫真の衝撃作。
~ヒエラルキーの上にいると思ってる人たちは、下なんか見ないじゃないですか。私、『つみびと』でその下と思われて見過ごされている世界を書きたいと思ったんです。
大阪二児遺棄事件をベースに、「言語化できない人々」を書き切った話題作が文庫に。
『つみびと』(山田詠美)
春日武彦との対談も。 pic.twitter.com/MOsUIKpMYA— 清風堂書店 (@seifudosyoten) September 27, 2021
著者について
山田詠美
一九五九年東京都生まれ。八五年「ベッドタイムアイズ」で作家デビュー。『ソウル・ミュージック ラバーズ・オンリー』で直木賞、『トラッシュ』で女流文学賞、『A2Z』で読売文学賞、『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、『ジェントルマン』で野間文芸賞、「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。『賢者の愛』『つみびと』ほか著書多数。
「今日は、世の中のすべてを愛して、明日は、そのすべてを憎む。それをくり返しながら、蓮音は、憎しみの世界の主人公になる自分を恐れて、現実から目をそむける。」山田詠美「つみびと」より。
— さちこ (@butabato) September 29, 2021
「モチーフは、2010年の大阪二児置き去り死事件です。
育児放棄などの母親たちの罪だけでなく、むしろ、DV、性的虐待、子どもの人格否定、マザコンといった、父親たちの罪が多様に描かれています。父親の責任を考えさせられます。
本書の内容紹介にあるコピーは「真に罪深いのは誰なのか」。私の印象は、父親たちの中で子どもを死なせた罪がもっとも重いのは、子の父の松山音吉で、人として罪がもっとも深いのは、子を死なせた母親の実母の継父の吉田伸夫です。
一人の父親として、育児書や教育関連の本はいろいろ読んできましたが、小説からしか得られないおもしろさや学びがあることが、よくわかる一冊です。」「大阪二児置き去り死事件という実話をもとに書かれた本です。虐待と貧困と不幸の世代間連鎖というよくある話が丁寧に描かれています。この物語を通じて一貫しているのは、セフティーネットがない日本の社会の現実です。」
「筆者は「普通の人々 ホロコーストと第101警察予備大隊」クリストファーブラウン著 谷喬夫訳 ちくま学芸文庫という本をほぼ同時に読んでいて、こちらも普通の人々がどのように「鬼」と化したがが学術的に描かれていて、本書のモチーフと重なってしまった。人間は誰でも「鬼」になりえるし、そうなってしまうことは哀切極まりない。」
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