飛ぶ孔雀 山尾悠子(著) 文藝春秋 (2020/11/10)

石切り場の事故以来、火が燃えにくくなった世界。

真夏の夜の庭園の大茶会で火を運ぶ娘たちは、孔雀に襲われる。

一方、男は大蛇が蠢く地下世界を遍歴し―。

煌めく言葉が奇異なる世界へと読者を誘う。

不世出の幻想作家による、泉鏡花文学賞・日本SF大賞・芸術選奨文部科学大臣賞、3冠達成の傑作小説。

「「伝説の幻想作家の八年ぶりの新作」といった宣伝文句に引力を感じて思わず購入したのですが、期待以上でした。
幻想そのものの密度でありながら、あまりにも確固としたモチーフの描写、登場人物たちの生々しいまでの存在感、自分がこの幻想世界に引きずり込まれているという自覚すらさせずに引きずり込む魔術のような手並み。
「ある時から突然火が燃えにくくなり、場所によってその『燃えにくさ』が左右される」「突如大園遊会が開催され、それに参加した『火を運ぶ娘』に孔雀が襲い掛かる」不可解で脳みそを揺さぶられますが、通り一遍ではない独創的なモチーフ、なんとなく「感覚的に」理解できる幻想性(冷静に考えれば理解できる訳がないのにそう思わせる)、その「幻想性と実在感が表裏一体になった、言い表しづらい感覚」が、この本の醍醐味でしょう。」

「生きていれば、彼女の新作が読める。それを至上の幸いだと思わせる作家が同時代にいるというこの奇跡。
眩暈を誘う舞台廻しの妙はどこか「仮面物語」に似ているか。また、あれほどの完成度で読む者を唸らせた初期の短編を、ある種の若書きであったのかもしれない、とさえ思わせる老練ぶりも。わかりやすい美を呈示して叙情に堕すことなく紡がれた稀有な物語である。
最後の一行の、その言葉に辿り着いて、ああここまで一緒に旅してきたのだこの子と、そうとは知らずに、という思いがすとんと胸に落ちる。」

「著者の作品を初めて手に取りました。様々なモチーフが次から次へと目の前を回ります。エンターテイメント性を期待していれば不向きかもしれません。しかし、その分、小説の凄みを感じます。幻想文学はかくあるべきだ!という小説でした。」


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