泣くな研修医 中山祐次郎(著) 幻冬舎 (2020/4/3)

「なんでこんなに無力なんだ、俺」

現役外科医が、新人医師の葛藤と成長を圧倒的リアリティで描いた感動のドラマ。

雨野隆治は25歳、大学を卒業したばかりの研修医だ。

新人医師の毎日は、何もできず何もわからず、上司や先輩に怒られてばかり。

だが、 患者さんは待ったなしで押し寄せる。

初めての救急当直、初めての手術、初めてのお看取り。

自分の無力さに打ちのめされながら、命を守るため懸命に戦う雨野の物語、第1弾。

「現役の外科医の手によるリアルな医療小説。豊富な医学用語(英語・ドイツ語)に最初は圧倒されるだろう。それだけでなく、細部の描写に至るまで、凄まじいリアリティが感じられる。実務経験が無ければこんな小説は書けまい。
まだ経験が浅く、直情径行な主人公と、経験豊富なリアリストの上司・先輩達とのコントラストも凄い。主人公の感性はまだ「こちら側」なのだ。これが数年で上司や先輩達のような「あちら側」の感性に変わってしまうかと思うと寂しいものがある。
主人公と同い年の「イシイ」という末期癌患者の人生が、個人的には一番心に来た。まだ20代半ばの若さで死なねばならない悲壮感だけでなく、現代医療でも末期癌はどうにもできないという無力感、「イシイ」のような患者は全国に沢山いるという絶望感を感じさせられて、読むのが大変辛かった。
医療小説を読むと、いつも健康状態が気になって憂鬱になる。なるべく無病息災でいたいものである。」

「私は普段、医療関係の仕事をしています。
研修医の先生が苦労して経験を積んでいることは聞いていましたが、これほどまでとは知りませんでした。
著者は消化器外科医であることから、描写がリアルで手術室や救命センターの緊迫感が伝わってきました。
正義感が強く感受性の高い主人公、研修医の隆治がもがきながら成長していく様子が描かれています。
主人公の先輩医師が、ある患者の病状を家族に説明するシーンでは印象深い一節がありました。

「人間の体は全てが繋がっている。心臓と肺は連係して体じゅうに酸素を運んでいるし、肝臓が体内に取り込まれた毒を解毒すると、腎臓はそれを捨てている。そして心臓・肺と肝臓・腎臓もいろいろなホルモンでお互いに影響しあっている。人間を一つのシステムとして見る能力は、医学部の試験勉強だけでは身につかない。これを学ぶための研修医生活でもあった」

登場するさまざまな患者は、現代の医療の問題を浮き彫りにしていて、自分事として考えるきっかけになるのではないでしょうか。一般の方にはもちろん、医療介護福祉関係者にもお勧めの一冊です。
ただ、私は読みながら涙がこぼれてしまったので、電車の中などで読まない方がいいと思います。」


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