JR上野駅公園口 柳美里 (著) 河出書房新社 (2017/2/7)

一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた―

東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのために上野駅に降り立った。

そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。

高度経済成長期の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、そして日本の光と闇…。

「帰る場所を失くしてしまったすべての人たち」へ柳美里が贈る傑作小説。

【全米図書賞・翻訳文学部門 受賞作】

「上野のホームレス(表層の世界では最下層に位置する)のリアルな描写から始まりますが、縦横無尽にしかし朴訥に、決して大上段だったり、斜に構えることなく、共同幻想の頂点に君臨する天皇制や、貧しい原発立地の村の人の生、共同体、富山から流れてきた人々の歴史や宗教、家族、そして東北大震災や原発を破壊し人々を飲み込んだ大津波が語られます。
「人生は誰 もが、 たった 一人 で 抱え 切れ ない ほど 膨大 な 時間 を 抱え て、 生き て、 死ぬ ─ ─。」
小説でしか経験できない体験でした。粗い部分もありますが、凄い小説でした。」

「米国図書賞受賞直前に読んで受賞を確信した。『ゴールドラッシュ』や『命』など以前の代表作とは一線を画す多重な小説的構造と、天皇制を根底に流れる低音主題にしながらも、格差や差別、ホームレス、高齢化社会、など様々な主題を絡ませて、最後を圧倒的な津波の描写で終わらせる筆力に感服。21世紀の大江健三郎かガルシア・マルケスと呼んでもいいが、それをこの長さの中編で描き切っているところに恐ろしさを感じる。」

「アメリカでの 受賞の 知らせを 聞いて すぐに 読んでみた。長年 上野近辺に勤め、上野公園を よく 知っているので、目に浮かぶ ようだった。ただ 場面が 切り替わるところが 難しく、さらりとは 読めなかった。土地の 訛りを 効果的に 取り入れ、貧しい人々の 悲哀を 描き出していた。声に 出して じっくり読んでみたい作品だ。」


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