
スーパーバイクなど高性能なバイクほどシートが高く、身長の低いライダーには足が届きません。
同じビッグバイクでも、アメリカンと呼ばれるチョッパータイプだと両足がベッタリ着くので小柄なライダーでも不安なく乗れます。
でも乗りたいバイクはコーナーを華麗にバンクして駆け抜ける高性能なスーパーバイク系と、憧れるライダーは数多くいます。
メーカーもそれはわかっていますが、だからといってもっと多くのライダーに乗ってもらうためにシートを低くすることはしていません。
それには妥協できない理由がいくつかあるのです。
どうして高性能なバイクほどシートが高いのですか?
A.深いバンク角でライダーが路面と接する乗り方に必要な高さだからです。
その理由は、コーナリング性能を最優先しているからです。
スーパーバイク系はレーシングマシンと同じで、コーナリング中にライダーが深く腰をイン側にズラし、膝を路面に擦り付けるフォームのライディングを前提に開発されています。
この状態ではシートの上には外側の太ももが載っていて、腰や内側の下半身は路面との間に挟まるような位置関係になっています。
ということは、シートを低くしてしまうとライダーはマシンのイン側へ下半身の置き場がなくなります。
つまり最新ロープロファイルでワイドなラジアル・タイヤが可能にした、60°以上もの深いバンク角の旋回性能をさらに追求するには、シートを徐々に高くしていく必要があったのです。
たまりにたまった仕事のストレス発散に、前から欲しかったオフロードバイクを衝動買いでもしたろうかと企みましたが、なんと!モデルチェンジしたKLX230がシート高大幅ダウンとのことで、購入断念。
カワサキも軟派になったものですね。 pic.twitter.com/HOGlwkhk1I— 犬江 八吉 (@byakuyanotabi) February 21, 2022
シートの高さが功を奏するのは…
加えて旋回中のマシンは、ライダーの体重など荷重が高い位置にあったほうが、テコの原理で旋回力そのものが強まります。
マシンそのものは、低重心のほうが安定性は高まりますが、曲がれるチカラという意味ですべてに低重心が良いというものではないのです。
そしてスーパーバイク系のシートをよくご覧になると、シートの後端になるほどさらに高くなっているのがわかると思います。
これは腰を深く落としたとき、シートの上を膝から太ももまでが斜めに横断した状態で、加速時に体重がトラクションを引き出すのにちょうど良いホールドと、路面との角度や距離などの位置関係を設定してあるからです。
ツーリングなどシートの後端が高いと、直立した状態のブレーキングでは腰が前のほうに滑ってしまう不便さもあるのですが、すべては深くバンクしたまま強く旋回できる、コーナリング・パフォーマンスに的を絞っているのです。
ご主人様が来るまでバイク??のシート温めるニャン!?? pic.twitter.com/XU5iMhI0eT
— 中佐学(まーくん) (@rttdy_489) February 21, 2022
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またステップの位置関係にも同じような意味が含まれています。
深くバンクするためと左右へ素早くリーンする運動性を狙って、スーパーバイク系はとてつもなくスリムなエンジン幅と車体幅に収まっています。
左右へ重量物が張り出すと、振り子のような余計な慣性モーメントが発生してしまい、リーンが緩慢になるからです。
この細身な車体のおかげで、足をのせるステップが深いバンクでも接地することなく、実はやや低めに設定することができているのです。
もしステップ位置が高いと、深くイン側に腰を落とした下半身の膝を曲げるにも太ももと脛が当たって、それ以上内側へズラせなくなるのは想像がつくと思います。
ということで、小柄なライダーにはやさしくないスーパーバイク系ですが、そもそも車体が超スリムでシートの前側をさらに絞り込んであるため、慣れれば小柄なライダーでも停車時に片足を着くことが可能なように配慮はされています。
止まるたびに腰をズラして片足を着くというのは苦行かも知れませんが、絶対にムリと諦める必要はないと思います。
それに一般公道では60°もの深いバンク角は使い切れませんし、腰を落とすにしても限度があると割り切るなら、サスペンションなどで調整をして、シート高を下げる工夫もアリだと思います。
ただ車高を下げるといっても、スイングアームの角度をリヤサスがあまり沈んだ状態にすると、大事な旋回中にスロットルを開けてすぐのトラクション効果が損なわれるという、専門知識が必要な難しい面を伴うので、そこは詳しいプロに相談しつつをお奨めしておきます。