HONDA GORILLA50(ホンダ ゴリラ)究極のマイクロツアラー

「ゴリラ」という名前を聞いただけで、胸が熱くなるバイクファンは少なくないのではないでしょうか。

Honda GORILLA50(ホンダ ゴリラ50)は、1978年(昭和53年)8月に初代モデルが誕生した、ホンダが誇る50ccレジャーバイクの名車です。

その出自はモンキー(MONKEY)の兄弟車であり、「モンキーの兄貴分」として世に送り出されました。

モンキーという名の動物の大きな仲間だから「ゴリラ」――ホンダのネーミングセンスが光る、愛嬌たっぷりの一台です。

初代ゴリラが登場した1978年は、ホンダが「レジャーバイク」というカテゴリーを日本市場に根付かせていた時代でした。

モンキー、ダックス、ハンターカブなど、遊び心あふれる50ccモデルが次々と登場し、バイクシーンは賑わいを見せていました。

そのなかでゴリラが持っていた独自のコンセプトこそ、このバイクを特別な存在にした最大の理由です。

モンキーが「クルマに積んで目的地で楽しむ」というコンセプトであったのに対し、ゴリラは「目的地まで自走する」ことを前提に開発されています。

だからこそ、モンキーの約2倍にあたる9リットルという大容量の燃料タンクを搭載し、4速マニュアルミッションを採用したのです。

初代の発売当時、モンキーが3速仕様だったのに対し、ゴリラは4速リターン式トランスミッションを採用していました。

当初の最高出力は7,000回転で2.6馬力というスペックでしたが、街乗りから遠乗りまで楽しめるキャラクターを持っていました。

1979年には、外装類に豪華なメッキ処理を施した限定モデル「ゴリラリミテッド」が登場し、大きな反響を呼びました。

続く1981年にはガソリンタンクのグラフィックを3本ストライプに変更し、前後ホイールをゴールド仕上げにしてよりタフなイメージを強調しています。

1985年には大きなマイナーチェンジが行われました。

シリンダーヘッドの燃焼室形状のコンパクト化、フラット型ピストンの採用、ロングコンロッドへの変更などによって圧縮比が8.8から10.0にアップしました。

最高出力は3.1馬力(7,500回転)、燃費は70km/Lから90km/Lへと大幅に向上しています。

しかし1985年を最後に、ゴリラはいったんラインナップから姿を消すこととなります。

その後、1988年モデルまでは残存在庫の販売が続きましたが、いわゆる「6Vゴリラ」の時代はここで幕を閉じました。

その後、長いブランクを経て1998年2月に待望の復活を遂げます。

ファンからの強い要望に応える形での再登場であり、新たな12VバッテリーとCDI点火方式を採用した「12Vゴリラ」として生まれ変わりました。

オートカムチェーンテンショナーやMFバッテリーの採用でメンテナンスフリー化が進み、当時の価格は19万4,000円でした。

その後もカラーリング変更を繰り返しながら販売が続けられましたが、2007年1月に発売された最終型「グラファイトブラック」モデルをもって、平成19年排ガス規制への適合が叶わず、ゴリラは惜しまれながらも生産終了となりました。

最終型の新車価格は21万5,250円でした。

シルバーのウイングマークをブラックのボディに配し、ハンドルやウインカー、リアキャリアにクロームメッキを施したこのモデルは、ゴリラというバイクが持つ「力強さ」と「ワイルド感」を見事に体現した一台でした。

2007年以降も、兄弟車のモンキーは生産が継続されたため、ゴリラの125cc版での復活を望む声が根強く上がり続けました。

2018年にはモンキーが125ccとなって復活を遂げたことで、ゴリラ125の登場を期待するファンの声は一層高まりました。

2026年現在においても公式からの発売情報は届いていませんが、それでもゴリラへの愛は色あせることなく、絶版となった今も中古市場では高い相場を維持し続けています。

どんなバイク?

Honda GORILLA50を一言で表すなら、「50ccでありながら本格的な走りと実用性を追求したミニバイクの傑作」といえるでしょう。

まず目を引くのが、その独特のシルエットです。

モンキーと同じコンパクトなフレームを持ちながら、車体前部には存在感抜群の大容量9リットルタンクが鎮座しています。

このビッグタンクこそがゴリラの象徴であり、モンキーとの最大の外観上の違いでもあります。

タンク容量がモンキーの約2倍あるため、燃費90km/Lという優れた経済性を持つエンジンと組み合わせると、理論上の航続距離は最大810kmにも達します。

エンジンはモンキーと同じ空冷4ストロークOHC単気筒49ccを横置きに搭載しています。

このエンジンの設計は非常にシンプルかつ堅牢で、長年にわたって熟成が重ねられてきました。

最終型では最高出力3.1PS/7,500rpm、最大トルク0.32kgf・m/6,000rpmを発揮します。

数字上は控えめですが、軽量コンパクトな車体とのマッチングが絶妙で、街中での走りは思いのほか軽快です。

ミッションはモンキーが自動遠心式の3速を採用したのに対し、ゴリラはマニュアル式の4速リターンを標準としています。

クラッチ操作とシフトチェンジを自分でコントロールする楽しさは、スクーターやAT車では味わえない生のライディング体験です。

50ccというコンパクトな車格ながら、本格的なマニュアルバイクとしての操作感が楽しめるのがゴリラの魅力のひとつです。

フレームはバックボーン型のシンプルなTボーン構造を採用しており、前後に8インチのワイドなブロックパターンタイヤを装着しています。

このタイヤのワイルドさが見た目の力強さを演出するとともに、路面を確実につかむグリップ感と、ちょっとした段差や悪路でも安心して走れる万能性をもたらしています。

サスペンションはフロントにテレスコピックフォーク、リアにはスイングアームとツインショックを採用しています。

バイク全体の重量は乾燥重量で62〜67kgと非常に軽量であり、大人なら軽々と持ち上げられるほどです。

この軽さは小柄な人や女性にとっても大きなメリットで、取り回しのしやすさを高めています。

シートはモンキーと異なる専用設計で、クッションが厚く肉厚に仕上げられています。

サイドには鋲(びょう)打ちのデザインが施されており、ゴリラ独自のワイルドな個性を際立たせています。

このシートの座り心地は意外にも良好で、長時間のライディングでも快適性を保てる設計になっています。

もうひとつのゴリラの特徴は、カスタムベースとしての優れたポテンシャルです。

シンプルな構造ゆえに社外パーツが豊富に揃っており、エンジンのボアアップからフレーム交換、外装カスタムまで、自分だけの一台を作り上げる自由度が極めて高いです。

4ミニ(4ストローク採用の原付ミニバイク)の世界では「フレームからエンジンまで全て社外パーツで組み上げることが可能」とも言われており、ゴリラはその代表格のひとつとして知られています。

1998年に復活した12Vゴリラ以降は、CDIマグネット点火方式、オートカムチェーンテンショナー、MFバッテリーを採用し、現代的なメンテナンス性を確保しています。

ヘッドライト、ホーン、ウインカーのスイッチを左ハンドルに集中配置したレイアウトも使いやすい設計です。

また、リアキャリアにはU字ロックホルダーが付いており、ゴムロープやフックをかけやすい実用的な仕様になっています。

ゴリラが発売された時代、ホンダは50ccクラスだけでも7機種10タイプものレジャーバイクをラインナップしていました。

その中でゴリラが現在まで多くのファンに愛され続けているのは、単なるノスタルジーだけでなく、このバイクが持つ「走ることへの純粋な楽しさ」が時代を超えて人々の心を掴んでいるからではないでしょうか。

Honda GORILLA50のインプレッション

実際にゴリラに乗ってみると、まず驚かされるのはその取り回しのよさです。

乾燥重量62〜67kgという軽さは、バイク置き場での移動や駐輪時の取り扱いを極めて容易にしてくれます。

小柄な人でも片手で押すことができ、マンション住まいや狭いガレージを持つライダーにも扱いやすい一台です。

足つき性については、シート高が735mm(最終型AB27)と比較的低く設定されており、身長160cm程度のライダーでも両足をしっかりと地面につけることができます。

これは女性や初心者ライダーにとっても安心できる数値です。

ただし、前後8インチという小径タイヤの影響でシート位置が若干低く、長身のライダーには窮屈に感じるケースもあります。

乗り心地については、見た目のコンパクトさからは想像できないほど快適という声が多いです。

ホンダ純正の肉厚シートは着座面が広く、クッション性も十分です。

路面からの振動吸収もしっかりしており、大きめのブロックパターンタイヤと長めのリアサスペンションが連携してショックを吸収してくれます。

走行時のポジションは、アップタイプのバーハンドルのおかげで背筋を自然に丸めた状態でニーグリップができます。

腰への負担が少なく、ゆったりとした姿勢で乗れるため、ロングライドでも疲れにくいというのがオーナーたちの共通した評価です。

ハンドル高があることでポジションが楽なのは、ゴリラが「自走を前提」として設計された証といえるでしょう。

走行性能は、50ccの枠内で扱いやすくチューニングされています。

低中回転域での粘り強さと高回転でのスムーズな吹け上がりを兼ね備えたエンジン特性は、街乗りから郊外の山道まで幅広いシーンで威力を発揮します。

4速マニュアルミッションのシフトフィールはカチッとしたダイレクト感があり、変速のたびにライダーに満足感を与えてくれます。

しかし、50ccという排気量特有の制限もあります。

法定速度が30km/h(原付一種)に制限されているため、幹線道路での走行は他の車両と速度差が生じてしまいます。

また、二人乗りも法律上禁止されています。

こうした制約はゴリラに限らず50ccクラス全般の課題ですが、それを差し引いても「乗っているだけで楽しい」という魅力がゴリラにはあります。

燃費の良さも評価が高いポイントです。

30km/hの定地走行テスト値で90km/Lという優秀な数値は、実走でも40〜50km/Lを維持できることが多く、通勤・通学での利用コストは非常に低くなります。

9Lという大容量タンクと組み合わせると、実質的な航続距離は400km超を記録することも珍しくありません。

給油の頻度が少ないことで、ライダーはストレスなく走りに集中できます。

音とフィーリングについても特筆すべき点があります。

アップタイプのマフラーから響くエンジン音は、歯切れよく小気味よいサウンドです。

大排気量バイクのような重低音とは異なりますが、4ストロークOHCエンジン独特の軽快な高周波音は、多くのライダーが「ゴリラらしさ」として愛着を感じるポイントになっています。

注意点としては、メーターがヘッドライトに埋め込まれた小型のスピードメーターのみという点が挙げられます。

スピードとオドメーターしか確認できず、走行中はやや見にくい面もあります。

また、絶版車であるため部品の入手には手間がかかることもあり、購入前にパーツ供給状況をしっかりと確認しておくことが望ましいです。

それでも、走るたびに自然と笑顔になれるゴリラの魅力は本物です。

現代のインジェクションバイクとは一線を画す、キャブレターとマニュアルミッションが織りなすアナログな走り味は、多くのライダーにとって「バイクって、こんなに楽しかったんだ」と再確認させてくれる体験になるでしょう。

Honda GORILLA50のスペック

項目 スペック
型式 AB27(最終型)
全長 1,365mm
全幅 625mm
全高 875mm
ホイールベース 895mm
シート高 735mm
最低地上高 165mm
乾燥重量 62kg
エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量 49cc
内径×行程 39.0mm × 41.4mm
圧縮比 10.0
最高出力 3.1PS(2.3kW)/7,500rpm
最大トルク 0.32kgf・m(3.1N・m)/6,000rpm
点火方式 CDIマグネット点火
変速機 常時噛合式4速リターン
クラッチ形式 マニュアル式湿式多板
燃料タンク容量 9L(リザーブ1L)
燃費(定地走行) 90.0km/L(30km/h定地走行テスト値)
フロントタイヤ 3.50-8 35J
リアタイヤ 3.50-8 35J
フロントブレーキ ドラム式
リアブレーキ ドラム式
フロントサスペンション テレスコピック式
リアサスペンション スイングアーム式(ツインショック)
バッテリー電圧 12V
発売年月(最終型) 2007年1月
メーカー希望小売価格(最終型) 215,250円(消費税込)

みんなのインプレッション

ゴリラは乗り手を選ばない懐の深いバイクです。

ここでは実際のオーナーや元オーナーたちの声を集めてみました。

『ずっとゴリラが大好きで、モンキー125にも乗ったことがあるけれど、やっぱり50ccのゴリラの方が体に合っている気がした。あの小さいけど頼もしいエンジン音と、4速マニュアルのダイレクトな感覚は他のバイクでは代えられない。「やっと出会えた!」という感じで購入し、今も毎日の通勤に使っている。』

『高校の頃にバイトして買ったのが8万円のオンボロゴリラ。マフラーから煙が吹いてポンコツだったけれど、自分でコツコツと直していくうちに愛着がどんどん深まった。あの時「バイク屋には頼らず全部自分でやろう」と決心したことで、整備の楽しさを知った。ゴリラは整備入門バイクとしても最高だと思う。』

『コンパクトすぎて窮屈そうに見えるけれど、実際に乗ると驚くほど快適だった。フカフカの純正シートはお尻が痛くなりにくく、アップハンドルのおかげで姿勢も楽。郊外への軽いツーリングでも2〜3時間は問題なく走れた。周囲からも「似合っている」と好評だったのがうれしかった。』

『燃費の良さには毎回驚かされる。通勤で片道10kmを使っても、月のガソリン代が1,500円を切ることもある。9Lのタンクを一度満タンにすれば、しばらく給油を忘れていても余裕で走れるのがゴリラの大きな魅力だ。電車通勤よりはるかにコストが安くて、走る楽しさもある。』

『6Vのゴリラを長年乗ってきたが、電気系統のトラブルには悩まされた。交流と直流の仕分けに戸惑い、配線を一からやり直すことになったこともある。それでもトラブルのたびに自分で調べて直す経験が積み重なり、今ではバイクの構造がかなり分かるようになった。手のかかる子ほど可愛いとはよく言ったものだ。』

『現在はツーリング用として使っているゴリラで、6年かけて少しずつ全体的に手を入れてきた。マフラー交換からボアアップ、サスペンション変更まで、まさにプラモデルをいじる感覚で楽しんでいる。部品が豊富に流通しているのがカスタム面での強みで、自分だけのゴリラを作れるのが最大の喜びだ。』

『ゴリラを手放してしまったことを今も後悔している。当時はもっと大きなバイクへの乗り換えを急ぎすぎたと思う。小さな車体に詰め込まれたバイクの本質、マニュアル操作の醍醐味、あの独特のエンジン音――今になってその価値がよく分かる。いつかまた手に入れたいと中古市場をこまめにチェックしている。』

『知人から譲り受けたゴリラを通勤と郊外へのプチツーリングに使っている。特に早朝の空いている道をゴリラで流す時間が最高のリラックスタイムになった。カスタムは控えめにして、できるだけノーマルに近い状態で乗っているが、それでも毎日乗るのが楽しみで仕方ない。50ccのバイクがこんなに充実感を与えてくれるとは思わなかった。』

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