
国家と対決し獄中で死を選んだ金子文子。
女性参政権を求め競走馬に身を投じたエミリー・デイヴィソン。
アイルランド独立闘争の狙撃手マーガレット・スキニダー。
約百年前、日本と英国それぞれの地で、今のありようをぶち壊し、人間のまったき独立を命がけで求めた三人の生涯を熱く描く。
時空を超え孤独な魂を鼓舞する、女たちの物語。
本書は、単なる歴史読み物ではない。
帝国主義という巨大な装置のなかで、名もなき存在に押し込められた女性たちが、
「生きる主権は我にあり」と叫びながら行動した軌跡を追う一冊だ。
金子文子は、貧困と差別のなかで育ち、やがて国家権力そのものを問い詰める思想へと至る。
エミリー・デイヴィソンは、女性に選挙権がなかった時代、身体を張って抗議し、その最期によって世界に問いを投げかけた。
マーガレット・スキニダーは、独立を求める闘争の最前線で銃を手にし、植民地支配と向き合った。
三人の物語は別々の土地で展開するが、本書では交錯するように描かれ、読者は時代と国境を超えて「抵抗」というテーマに向き合うことになる。
構成は決して平易とは言えないが、その混ざり合う叙述こそが、歴史の断片と断片を響き合わせる装置として機能している。
ブレイディみかこは、史実を丹念にたどりながらも、そこに生きた人間の感情と息遣いを浮かび上がらせる。
女性である前に、ひとりの人間として尊厳を求めた彼女たちの姿が、現代を生きる私たちに鋭く問いかける。
いま当たり前のように享受している権利が、誰かの痛みや犠牲の上に築かれてきたことを、本書は静かに、しかし力強く伝える。
読み進めるうちに、単なる過去の英雄譚ではなく、「では、あなたはどう生きるのか」と背中を押される感覚を覚えるだろう。
304ページというボリュームながら、思想と感情が濃密に詰まった一冊である。
歴史人物評伝としても、フェミニズム史の一断面としても、そして「生きるとは何か」を考える書としても読み応えがある。
ブレイディみかこ
Mikako Brady
ライター。1996年より英国在住。『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)で第16回新潮ドキュメント賞受賞、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)で第73回毎日出版文化賞特別賞ほか受賞。『他者の靴を履く』(文春文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ文庫)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『その世とこの世』(谷川俊太郎との共著、岩波書店)等、著書多数。
『人間の尊厳の為に命を賭して戦った女性三人を描いた評伝。必読。』
『マイノリティ・ファースト! そして、エンパシー!』
『文章の歯切れの良さは、そのまま生の歯切れ良さを表現する。』
『3人の女性については知りませんでした。とても興味深く、読んで良かったです。』
『手がつけられないほどの【自分を生きる力】を自分にも呼び戻したい。』
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