忘却のための記録 1945-46恐怖の朝鮮半島 清水徹 (著) ハート出版 (2022/6/20) 1,320円

少年は見た! 想像を絶するソ連兵の蛮行

爆撃、襲撃、復讐、暴行、略奪、強姦、極寒、飢餓、病気、そして死ー。

1945年、北朝鮮。ソ連兵から逃げる日本人家族の過酷な引き揚げを、少年の視点で描いた「慟哭の書」普及版化!!

本書に書かれてあることは東日本大震災の体験というよりは、今日のウクライナ難民の体験に近いもので、

それは日本帝国崩壊の過程でいまや異郷となった戦場の地を逃げ惑う体験であり、

収容所や避難所での生活があるといっても、それは家族や同居者が高熱にうなされ、

土色の皮膚に変わり、ある日、ある一家が消えるように死んでいく体験であった。

ー東京都立大学名誉教授 鄭 大均

はじめて別館で女性が要求されたときのことー。

「マダム、イッソ、ヤポンスキーマダム、イッソ?」(イッソは朝鮮語で、「いるか?」の意)

二人の若い兵隊が入って来るなり、そういった。二人とも自動小銃を構えていた。

例によって、みんなは一斉に両手をあげた。

ぼくは初め、兵隊のいっていることがよくわからなかったが、

彼らが何回もそれを繰り返しながら女の人を探すような様子をみせたので、

やっぱりロスケは女の人を連れ出そうとしているんだな、何という下劣なヤツだ! とにらみつけてやった。
(本文より)

目次
第一章 運命の岐路
第二章 亡国の民
第三章 マダム・ダワイ
第四章 民族受難
第五章 落ち穂
第六章 生存の条件
第七章 この世の地獄
第八章 早春の哀歌
第九章 ああ、三十八度線

解説 鄭大均(東京都立大学名誉教授)

「私も0歳の時の引揚者ですが、余りにも辛い話は、祖母も両親もせず、38度線の事は、頭では知ってましたが、藤原ていさんの「流れる星は生きている」を読み、はっきり理解したのですが、同じ北朝鮮の同じ地域みたいで、ただただ唖然としてました!ただ、私は、根本的に、北朝鮮を植民地にした日本が悪いと思ってるので、民間人の引揚逃避行の悲惨さ、ロシア人の横暴、など、それも15歳の少年の経験談なので、何も言えないと思いました!愚かなる戦争は、絶対すべきでない!それのみだけど、私が、15歳で経験したら、生き延びれただろうか?デス。日本国も軍人も、真っ先に逃げたそうで、今の政治の現状と似てます!」

「当時少年だった著者の視点で描かれる朝鮮北部(今の北朝鮮)からの、避難民として筆舌に尽くしがたい辛苦が書かれています。非常に平素な言葉で丁寧な文体なので、その生々しさが強く伝わってきます。
国という後ろ盾を失った民族は悲惨なばかりで、ソ連兵と一部朝鮮人の蛮行は枚挙に暇がありません。避難する著者も、飢えやチフス、シラミが襲い掛かります。シラミの話は本当に怖かったです。また他人の食糧をくすねるなどの行為もしており、生き延びる事に必死であった事も伝わってきます。屋外での排便で生の喜びを知るとか残飯あさりやそこから羊羹を作る話などは、壮絶すぎる話に一瞬のやすらぎを与えてくれます。
最終的には38度線を越えた所で涙を流しながら皆で喜ぶと言う終わり方ですが、沖縄・広島・長崎を忘れないように強く叫ばれるのに対して、満州や朝鮮にいて犠牲となった日本人の事も決して忘れてはならないと思います。だからこそ本書は忘却しないための記録とも言えます。」


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