ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人 東野圭吾 (著) 光文社 (2020/11/30)

謎を解くためなら、手段を選ばない。コロナの時代に、とんでもないヒーローがあらわれた!

名もなき町。ほとんどの人が訪れたこともなく、訪れようともしない町。

けれど、この町は寂れてはいても観光地で、再び客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。

多くの住民の期待を集めていた計画はしかし、世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。

町は望みを絶たれてしまう。そんなタイミングで殺人事件が発生。

犯人はもちろん、犯行の流れも謎だらけ。当然だが、警察は、被害者遺族にも関係者にも捜査過程を教えてくれない。

いったい、何が起こったのか。「俺は自分の手で、警察より先に真相を突き止めたいと思っている」──。

颯爽とあらわれた〝黒い魔術師〟が人を喰ったような知恵と仕掛けを駆使して、犯人と警察に挑む!

最新で普遍的。この男の小説は、ここまで凄くなる。

東野圭吾、圧巻の離れ業。

「コロナ禍でリモートワークが当たり前になった状況がうまく作品シチュエーションに反映されていて面白い。
リモートワークにより、都会での社会生活を持ちながら、密を避けて地元に生活の拠点を置くことが可能になったので、
地元の人間関係と都会での社会生活を両立させることができるような時代になった。
そんな時代特有の人間関係で成り立つシチュエーションが秀逸。
神尾武史のアクの強いキャラクターも良い。続編が出たら是非読みたい。」

「東野圭吾さんの小説の半分以上は読んでいる読者ですが、この小説は、ガリレオシリーズの中でも『容疑者Xの献身』であったり、『新参者』などの加賀恭一郎シリーズ全般の系譜を継ぎ、単なる謎解きではなく、そこに至る過程で、なぜそのような事件が起こったのか、起きてしまったのかという人間心理を巧みにかつ丁寧に描いた、私の中では、これぞ「東野圭吾の真骨頂!」というべきものでした。
ネタバレにならないようぼかしたレビューになりますが、舞台回しは被害者の娘が担っています。
ですが、この本の真の主人公は、元マジシャンである被害者の弟で、彼が繰り出す「会話のテクニック」に驚き、魅了されること間違いありません。」

「謎解きを進めるこの真の主人公以外に、東野さん独特の世界観である、登場人物ごとの慎ましやかな世界の中で起こっている出来事。それはコロナ禍における在宅勤務でお互いの神経をすり減らすことになってしまった夫婦の話、売れっ子漫画家とその親友だった男の子の友情物語、何より、物語の進行役である被害者の娘と婚約者の心のすれ違い様など、人間はこんな些細な一歩が足りないだけで悲劇を生んでしまうんだな、確かにそんなことってあるよなと、思わず感情移入してしまうストーリーがいくつも描かれています。
真の主人公である被害者の弟は、「俺がしているのは推理じゃなくて人間の行動パターンを追っているだけだ」と謙遜しますが、洞察力に富む人のすごみや、人間心理の機微をわかることの大切さをつくづく感じる本でした。
小難しいことを書きましたが、読後感はいいです。東野圭吾さんの本流を知りたい方にはお勧めの本です!」


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