炎環 永井路子(著) 文藝春秋 新装版 (2012/6/8) 748円

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、主人公は北条義時

激しく、あるときは陰湿に。

源頼朝の挙兵、鎌倉幕府の成立――台頭する武士たちはどう生きたのか。

鎌倉武士の生きざまを見事に浮き彫りに。

直木賞受賞作の傑作歴史小説

「日本の歴史において血で血を洗うような抗争の繰り広げられた時代といえば、まず戦国、次いで幕末あるいは平安末期の源平時代あたりが思い浮かびますが、鎌倉初期も、司馬遼太郎が『街道をゆく 三浦半島記』で指摘したように相当「血なまぐさい」時代だったようです。しかし、戦国や幕末が新時代の樹立に向けての闘争であったのに対し、鎌倉初期のそれは一応、幕府成立後の権力闘争という意味合いが強かったようです。権謀術数が渦巻き、暗殺が繰り返され、一族郎党皆殺しが当たり前といった世相の中で源氏の血統は途絶え(それも実朝暗殺という暗い幕引きだった)、やがて北条氏に権力が集中してゆくわけですが、本書はその過程を、頼朝の異母弟全成、梶原景時、政子の妹保子、時政義時父子をそれぞれの主人公に据えた四編の短編小説で四者四様の視点で描いています。同じ事件であっても四者四様に微妙に異なった見方が示され、また、まだ農民の親玉程度の存在でしかなかった(後世の「武士道」というには荒削りな)鎌倉武士の猛々しさ、命に対する潔さもよく描かれています。鎌倉幕府草創期を舞台にした小説はそれほど多くないせいか、その意味では貴重であると同時にその時代の雰囲気がよく伝わってくる小説です。」

「主人公が違う4つの短編によって、鎌倉時代初期の歴史を客観的にみてようとした本です。
現在はこういう手法で書かれた本はいくつかありますが、当時は斬新だったと思います。
阿野全成(頼朝の異母弟)、梶原景時、北条保子(北条政子の妹)、北条義時(北条政子の弟)がそれぞれの短編の主人公です。
この本に書かれていることは真実とまでは言えませんが、それに近い史観だろうと思わされます。
加えて面白いともなると、☆6つぐらいつけたいぐらいです。
鎌倉時代についての永井路子さんの本はオススメです。」

「義経だけでは個人的悲劇。頼朝まででも朝廷との反目が未解消。源氏正嫡滅亡・承久の乱で3上皇を島流しにして鎌倉幕府が台頭するまでがしっかりと描かれている作品となりました。
「炎環」4部作最後の「覇樹」編の主人公は鎌倉幕府2代目執権・北条義時。
清盛・頼朝・政子・義経のスピンオフとしての位置づけになるのでしょうが、スケールの大きさが段違い!  独眼竜・伊達政宗すら霞むほど。  平将門や頼朝ですら成し得なかった朝廷を屈服させた唯一の人物です。
他の3部「悪禅師」(阿野全成)、「黒雪賦」(梶原景時)、「いもうと」(政子の妹・義時には次姉にあたる保子(阿波局))、そして「大河ドラマ・」アーカイブス」で放映された「草燃える」と見比べて当時の鎌倉に渦巻いていた権謀術数を考え楽しめました。
義時を主人公にして大河ドラマを企画するべきだとかねてから思っている次第です。
1年でギリギリかな。タイトルはやはり『炎環』でしょう。」


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