暁天の星 葉室麟 (著) PHP研究所 (2022/7/7) 880円

坂本龍馬に愛され、認められた男・陸奥宗光――。

明治新政府では県知事などを務めるも、政府転覆を企てたとして投獄されてしまった陸奥。

そんな彼の才能に目を留め、花開かせたのは、時の総理大臣・伊藤博文だった。

外務大臣として入閣した陸奥は、日本を欧米列強に伍する国家にすべく奔走し、不平等条約の改正に尽力する。

そして、日本の尊厳をかけて強国に挑まんとする陸奥を支え続けたのは、妻の亮子だった。

本書は、著者が最期に「これだけは書いておきたい」と願い、病と闘いながら綴った長編小説。

残念ながら未完ではあるが、著者の歴史作家としての矜持を感じ取れる貴重な作品である。

陸奥宗光のその後は、解説の細谷正充氏が、連載中の著者の想いは、長女の涼子氏が紹介。

坂本龍馬の姉を描いた短篇「乙女がゆく」を特別収録。

「いろんな意見もあるようだが、たとえ未完のものであっても、遺作を読むことができて本当に良かった。夭折を悔しく思いつつ、ここから先、葉室氏がどんな展開を書こうとしていたのかに思いを馳せる喜びもまた、楽しみ方だと思う。
ひいては葉室マインドを継ごうという作家が出てくるきっかけになると幸い。」

「幕末激動の最中に生まれ、坂本龍馬の影響を受けた陸奥宗光の立身出世物語。まさに、波瀾万丈の人生を、不平等条約改正のために奮闘した人物として、明治政府で果たした功績は大きいと思う。
薩長藩閥政府の中で異色の経歴を持ち、独裁に近い政権運営を進めていた初代総理大臣伊藤博文にも、正面から意見を言える数少ない人物であったと思われる。難局に際したときには、常に坂本龍馬の教えを思うあたりは、著者の思い入れがかいま見られる。日清戦争終了で、絶筆となったのが残念でしたが、日露戦争にむかうあたりの外交を読めなかったのは、筆者同様無念であり、後世に残したい一冊にしたかったのであろうと想像する。不平等条約の改正が、いかに大変であったかを知る良書だと思う。遺作となってしまったが、数々の名作を残した著者の想いは伝わってきた。
ご冥福をお祈りいたします。」

「最初に、未完のものを出版した出版社の姿勢に疑問を持つ。
葉室氏が執筆途中で逝去してしまったからであろうが、
内容的にピークアウトしているならともかく
これからピークに向かう所での<未完>での発行は
出版社が単に稼ぎたかったからではないかと、穿った見方をしてしまう。

内容的には薄い。
陸奥の功績が伝わってこない。
単に奥さん連れて鹿鳴館やロスに行って踊って、
青木周蔵に英国で交渉させた、
それだけ。
で、所々に作者が特別な想いがあるであろう、坂本龍馬礼讃をちりばめただけである。

非情に残念である。」


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