日本海のはずれ、朝鮮との国境に浮か養生島。
かつては漁業で栄えていた離島で暮らす三人の老女のうち、ナオの死で、いまはイオとソメ子のふたりが取り残されている。
九十二歳でひとり暮らしのイオの娘、ウメ子も六十五歳になった。
イオは海女をなりわいとして、八十五歳までアワビを獲るほど、心身ともに丈夫ではあるけれど、娘のウメ子としては心配でならない。
二十五年前の海難事故で命を落とした夫を供養するイオとソメ子。
異国からの密漁船による侵略や、地球温暖化など、不吉な未来を予感しながら、泰然と暮らしを守り続ける老女たち。
そんな島に、おそろしい台風が近づいてきて……。
名作映画「八月の鯨」のように、海辺での厳しい暮らしとシンプルに生きようとする姿に胸を打たれる。
いまの時代こそ、こんな世界に浸りたくなる。
谷崎潤一郎賞受賞作品。
解説・桐野夏生
年の瀬に、村田喜代子さんの『飛族』を読んでます。
離島に住む老婆たちの現実と、密入国者に目を光らせざるを得ない現実。
恋愛ものじゃない世界が好き。 pic.twitter.com/wW63Ft4rXC— ほんのよこみち?? (@honno_yokomichi) December 31, 2021
|