ハイブリッド戦争の時代 志田淳二郎 (著) 並木書房 (2021/5/7)

2014年のウクライナ危機以降、ハイブリッド戦争という言葉が頻繁に用いられるようになった。

尖閣周辺での中国の挑発行動や台湾有事の可能性を抱える日本でも、ハイブリッド戦争への関心が急速に高まっている。

ところが、論者によって「ハイブリッド戦争」が指し示す世界観が大きく異なっており、かえって、この言葉を用いることで、無用な混乱が引き起こされていることは否めない。

ハイブリッド戦争とは、国家主体が、あらゆる手段を駆使しながら、正規軍による武力行使未満の行動をとることで他国に危害を与える事態を指し、そのターゲットは民主主義だ。

国際政治学の視点に立つハイブリッド戦争の研究が、米中露の大国間競争下の生き残りをかけた日本に求められている。

ハイブリッド戦争の概念の変遷から、ユーラシアの東西における数多くの事例を紹介し、日本外交・安全保障への提言を盛り込んだ新進気鋭の研究者による意欲作!

出版社からのコメント
ウクライナ危機以降、ハイブリッド戦争という言葉は、安全保障専門家の間で拡大し、現在では日本の『防衛白書』にも記載されるなど、実務レベルでの関心が高まっている。
ところが、邦語で読めるハイブリッド戦争に関する書籍は、ほとんどない。米国に新政権が誕生したとしても、大国間競争という現代国際政治のトレンドが、今後、大きく変わるとは考えにくい。
大国間競争下でのハイブリッド戦争のダメージをすぐさま受けるのは、政治・社会の分断が深刻な国家である。それは、まさに現在の米国ではあるまいか。また、ウクライナのように大国のはざまに立たされている国家も、ハイブリッド戦争のターゲットになりうる。
それは、まさに日本である。時代が大きく動くとき、何よりも重要になるのは知識である。
二〇二一年という節目の年にあって、日本としては、大国間競争時代のハイブリッド戦争に関する知識を深める時期に、差しかかっているのではないだろうか。(本文より)

著者について
志田淳二郎(しだ・じゅんじろう)
名桜大学(沖縄県)国際学群准教授。1991年茨城県日立市生まれ。中央ヨーロッパ大学(ハンガリー)政治学部修士課程修了、中央大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(政治学)。
中央大学法学部助教、笹川平和財団米国(ワシントンDC)客員準研究員などを経て現職。専門は、米国外交史、国際政治学、安全保障論。
主著に単著『米国の冷戦終結外交―ジョージ・H・W・ブッシュ政権とドイツ統一』(有信堂、2020年)などがある。

「ウクライナ危機を始めとするハイブリッド戦争が実は単発の物ではなく、トレンドとして露中がガンガンに使っていることが分かりました。
ウクライナについては、クリミア半島だけではなく、西部でハンガリーを巻き込んで仕掛けられていること。
モンテネグロや北マケドニアといったNATO拡大に関連して仕掛けられているハイブリッド戦争が語られています。
この戦争に同盟の抑止力が効くのかどうか、国連常任理事国の露中が法の抜け穴を探って仕掛けている戦争にもっと注意が向くべきですね。」

「ここで言う「ハイブリッド戦争」の定義とは、「宣戦布告がなされる戦争の敷居が低い状態で、特定の目標を達成するために国家または非国家主体が調整の取れた状態で、通常戦力あるいは核戦力に支援されたうえで行う強制・破壊・秘密・拒絶活動」なるもので、この戦争が自衛権が発動できる対象であると100%言い切れない状況では、NATOのような同盟システムの組織では集団的自衛権の発動ができない場合も想定できる。

これは実際問題、「同盟の崩壊」に瀕する重大事項であって、中国やロシアが米国主導の同盟システムに対して「ハイブリッド戦争」仕掛けてくることが現実となった場合、それはリベラル国際秩序の動揺要因の一つとなることを認識すべきなのだ。

日本はこのような動きに対して、何らかのアクションを起こすことを迫られる時がくるのを今の段階から想定しておくべきであって、いざというとき、慌てふためきドタバタするようなみっともない姿をさらさないためにも、その対応策を考えておくべき時なのである。」


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