インフルエンス 近藤史恵(著) 文藝春秋 (2021/1/4)

大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨。

同じ団地に住む里子が、家族内で性虐待を受けていたことを知り、衝撃を受ける。

助けられなかったという自責の念を胸に抱えたまま中学生になった友梨は、都会的で美しい親友・真帆を守ろうとして、暴漢の男を刺してしまう。

ところが何故か、翌日警察に連れて行かれたのは、あの里子だった。

殺人事件、スクールカースト、子育て、孤独と希望、繋がり。お互いの関係を必死に隠して大人になった3人の女たちが過ごした20年、その入り組んだ秘密の関係の果てに彼女たちを待つものは何だったのか。

大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見えてくる。

女たちが幼いころから直面する社会の罪、言葉で説明できないあやうい関係性、深い信頼。ラストに用意された、ミステリファンも唸る「驚き」。

『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞した近藤史恵が描く傑作長編。

橋本環奈・葵わかな・吉川愛でWOWOW連続ドラマ化決定。

「作家であるわたしは、興味を引く話があるので会って話を聞いて欲しい、との手紙を受け取る。その話とは、手紙を出した人物とその友人二人の関係に纏わるものらしく、一旦は無視しようと思ったが何となく気になって話を聞くことにした。それは、小学生の頃から約40年程度にもわたる3人の女性の物語だった。
小説の構成は友梨、里子、真帆の3人の回想シーンが主体で、時折、わたしが手紙を出した女性から話を聞いている現在の場面が挿入されます。過去の話は衝撃的でなかなか緊張感があります。しかし、何といっても小・中学生の頃のその年代特有の閉鎖的な社会の中での少女たちの関係性や葛藤が、実によく描けていると思いました。前述の構成からは仕掛けややられた感を期待しますが、むしろその友情ともいえない複雑な感情がお互いにまさに影響を及ぼす展開が読みどころではないかと思います。」

「あらすじと、カバーの「いかにも悪意が満ち満ちてそうな、団地っぽいマンション」なデザインに惹かれ購入。いやー、面白かった。読み手を選びそうな内容ですが、メチャメチャ好みでした。本書は、「人間関係に内在する悪意とか黒い本音とか」をテーマとした厭ミス(と見せかけた感動友情小説?)です。エグい事件とか派手な展開とかはなく緩やかに淡々と進むのですが、「驚きの真実」はしっかりと盛り込まれています。それと、「とある女性作家に対して、とある女性が独白している(喫茶店で)」という形式なので、「これ、どちらかに隠された秘密があるはずだよな?」という興味も尽きません(形式は伊坂幸太郎の『フーガはユーガ』だけど、不安感が漂う雰囲気は貫井徳郎の『愚行録』に近い)。女性3名が主人公です。で、それぞれがそれぞれにコンプレックスや悪意を抱いたり、でも大切な存在でもあり、なのに酷いことをしてしまう。でも大事。みたいな、とにかく複雑な感情が入り混じった人間関係が、「あー、その気持ちわかるわー」みたいな、あるある感とともに描かれています。3名とも壮絶な生き様ですし、結局のところ誰も幸せになれないという展開なんですが、読んでいて辛いってことはなかったですね。良い意味で「緩い」ので、サクサクと読めます。読んでよかった。大満足でした。星五つとさせていただきたいと思います。」

「たぶん、最近自分はこういった本を自然と求めている。団地で生活したことないけど、近くに巨大な団地がありました。団地で繰り広げる終始重苦しい物語は、読んでいて気持ちよくもなんともないけど、ぐいぐい引き込まれてしまいました。友梨をはじめとする3人の女性の心理描写は、自分の思春期と照らし合わせて、小中高時代の、学業・不良・嫉妬などのキーワードが思い巡らせられる。とても気持ちが高まりました。近藤史恵さんの作品を初めて読みましたが、また違う作品も読んでみたいと思います。」


(クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事