鬼滅の暗号 瀧音能之 (監修) 宝島社 (2021/1/14)

鬼は時代の境い目に現れる

日本の歴史上、時代が大きな転換点を迎えるとき、多くの書物で鬼が大量に生まれたことが伝えられる。

世情が不安定になる時代の境い目に直面した人々は、何が正しく、何が間違いなのか、判断が難しく、疑心暗鬼の状態になる。

その漠然とした不安は、「鬼」という目に見える形のキャラクターへと投影されのだ。

鬼殺隊は時代に取り残されたマイノリティたちだった

『鬼滅の刃』に登場する鬼殺隊の隊員たちのほとんどは、明治維新による「四民平等」政策のマイナスの側面を被った人々だった。法律上は「平等」となりながら依然として差別に苦しみ職業を奪われて困窮する約1.5%の被差別民、職業を失った約7%の元武士(士族)たち、さらに「富国強兵」によって、社会福祉が後回しになった孤児や盲人などの社会的弱者などで、鬼殺隊は構成されているのだ。

キャラクターのモデルとなった神話や古典を紹介

家族を殺した上弦の弐・童磨への仇打ちを果たした胡蝶しのぶと同じようなエピソードが江戸時代に残されている。「宮城野(みやぎの)・信夫(しのぶ)姉妹の仇討ち」だ。白石城主の剣術師範・志賀団七に父を斬殺された姉妹は、仇を討つために武芸を磨き、ついにを倒した。仇討ち後、姉妹は罪を償うために自害しようとするが周囲に止められ、仏門に入って静かに余生を送ったと伝えられる。

新考察・鬼舞辻無惨=平将門説

鬼舞辻無惨との最終決戦で、無限城から地上世界へと放出されたポイントの背景画を考察すると、大蔵省印刷局によく似た建物が見える。排出ポイントの大手町から戦闘を重ねながら丸の内がある南へ移動していったと考えられる。大蔵省印刷局には将門の首塚があり、平将門と無惨には多くの共通点がある。竈門炭治郎の出身地に残る平将門の足跡や将門を討った藤原秀郷と炭治郎の共通点などを考察する。

登場人物の紋様に隠された意味

竈門炭治郎の石畳紋に隠された悪鬼を払う呪術、禰豆子の口かせと麻の葉紋が意味する鬼と人とをつなぐメッセージ、鱗滝左近次の波紋・雲紋が表す日本神話に登場した天狗、胡蝶しのぶの蝶柄の菱紋が暗示していた「薬」による無惨への攻撃など、紋様から各キャラクターの特性を読み解く。

「ブームにのって鬼滅の刃の考察本が多数でているが、その中でも独自の考察が多く紹介されている。

監修が、古代史が専門の瀧音能之先生ということもあり、神話や歴史的観点から新たな考察をしている。
鬼滅の刃のヒットは、世界の神話に共通するプロット(あらすじ)やテーマを用いたストーリーであることが要因であるとし、さらに日本神話や神社に伝わる伝説などのエピソードとの共通点を紹介している。

興味深かったのは、鬼舞辻無惨が平将門とする考察。
その論拠は、
鬼は疫病の暗喩として、将門の祟りによって疫病が流行したことがあった点
無限城から地上世界へ戻った際の背景描写が、将門の首塚のある当時の大手町の様子と酷似している点
炭治郎の家があった雲取山には将門が敗走したルートがあり、無惨が雲取山に現れたことと一致する点
将門を討伐した藤原秀郷は、黒死牟と似た百目鬼などの鬼退治の伝説ある点
などをあげている。

このほか、
禰豆子の口かせが竹製である理由
人が無惨の血によって鬼になる理由
我妻善逸と禰豆子が結婚した理由
など、ややこじつけ感があるものの考察として楽しめる。
鬼滅の刃を通して、日本の神話や歴史がわかる本で面白い。」


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事