きみだからさびしい 大前粟生(著) 文藝春秋 (2022/2/21) 1,650円

町枝圭吾、24歳。京都市内の観光ホテルで働いている。

圭吾は、恋愛をすることが怖い。自分の男性性が、相手を傷つけてしまうのではないかと思うから。

けれど、ある日突然出会ってしまった。あやめさんという、大好きな人に――。

圭吾は、あやめさんが所属する「お片付けサークル」に入ることに。

他人の家を訪れ、思い出の品をせっせと片付ける。

意味はわからないけれど、彼女が楽しそうだから、それでいい。

意を決した圭吾の告白に、あやめさんはこう言った。

「わたし、ポリアモリーなんだけど、それでもいい?」

ポリアモリーとは、双方公認で複数のパートナーと関係を持つライフスタイルのこと。

あやめさんにはもう一人恋愛相手がいるらしい。

“性の多様性”は大事なのはわかるし、あやめさんのことは丸ごと受け入れたい……けれど、このどうしようもない嫉妬の感情は、どうしたらよいのだろう。

勤務先はコロナ禍の影響で倒産。お片付けサークルも、“ソーシャルディスタンス”の名のもと解散になった。

圭吾はゴミが溢れかえる部屋の中で、一日中、あやめさんに溺れる日々を始めるのだった――。

いま最も旬な作家との呼び声も高い大前さん。

男らしさ・女らしさの圧に悩む大学生を描いた『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は各所から絶賛され、大きな話題に。

笑いの暴力性に切り込んだ『おもろい以外いらんねん』は、アメトーーク!読書芸人回でも紹介されました。

ananの「いまどき男子」特集では、若者文学の担い手として紹介されています。

本作はジェンダー文学として「アップデートされた価値観」を提示する作品でありながら、恋の切なさと喜びを凄まじい解像度で描いた、剛速球の恋愛小説でもあります。


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