【第26回島清恋愛文学賞受賞作】
「私たちは、友達じゃない」
25歳、夏。恋人と出かけたリゾートで、逢衣(あい)は彼の幼なじみと、その彼女・彩夏(さいか)に出逢う。
芸能活動をしているという彩夏は、美しい顔に不遜な態度で、不躾な視線を寄越すばかりだったが、四人で行動するうちに打ち解けてゆく。
東京へ帰った後、逢衣は彩夏と急速に親しくなった。やがて恋人との間に結婚の話が出始めるが、ある日とつぜん彩夏から唇を奪われ、「最初からずっと好きだった」と告白される。
彼女の肌が、吐息が、唇が、舌が、強烈な引力をもって私を誘う――。
綿矢りさ堂々の新境地! 女性同士の鮮烈なる恋愛小説。
6月17日発売の綿矢りささん『生のみ生のままで』文庫本の解説を書きました。女性同性愛を描くこの小説で、二人の女性がどのようにその二人ならではの「特別」を築きあげたのか、単行本刊行時の書評でしばしば見られた問題についても触れながら書いています。ぜひ読んでください?? pic.twitter.com/zkYuVrsApp
— 水上文 (@mi_zu_a) June 9, 2022
【著者プロフィール】
綿矢りさ(わたや・りさ)
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞。
「私的百合小説の好みは「ありふれた風景画」です。静かなタッチで語られる情景は、とても瑞々しく心に刺さりました。一方、「生のみ生のままで」は、彩香の情熱に逢衣が陥落するまでの件はガールミーツガール風に描かれており、ちょっと漫画っぽいという印象でした。LGBTの方は、自分がそうであると気付くと、その後生きて行く様々な局面で葛藤が生じるのではないかと勝手に思っているのですが、この二人は「フィルター」の外れ方が一気過ぎて、それってどうなん?って印象です。男でも女でもなく、性別を超えて人として惹かれるというワードが出ますが、「ありふれた風景画」ではピュアな感じで惹かれ合うのに対し、「生のみ生のままで」では躊躇いや逡巡もあっという間に飛び越えて肉欲的な惹かれ方をしており、この様なカップルは長続きするのだろうか?と気になりました。」
「彩夏がひたすら愛を求める姿がいじらしく、「男も女も関係ない。ただ逢衣だから好き。」の言葉が刺さる。」
「女性同士の恋愛という意味で非常に参考になった。ただリアルな性描写の分量が多いので、苦手な方は気をつけてください。」
「読者が異性愛者であっても、この小説の中で一人の人間がもう一人の人間に惹かれていく過程での心の動きが凄く伝わってくる。文章は詩的すぎるかなと思う所はあったけど、それを補って余りあるくらい心理描写がうまい。上巻の2人は刹那的で、ハラハラしながら一気に読んでしまった。」
「綿矢さんが、テレビに出てこの本の事をお話ししていたので、読みたくなって買いました。とても面白くハラハラする場面とか今の社会には、あり得る話しだなと思いながら、楽しくもあり涙を潤ませる所もありいい本に出会えて良かったです。」
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