1987年に誕生して以来、累計発行数約8億枚、年間では約5000万枚、使える店舗は約5万7000店、92.3%という高い認知度を誇る全国共通のギフトカード「QUOカード」。
これをデジタル化してバーコード決済で使えるようにした「QUOカードPay(クオカード ペイ)」が2019年3月に始まっています。
サービス開始を記念して、QUOカードPay1億円分が1人に当たるプレゼントキャンペーンも話題になりました。
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1987年にQUOカード誕生
物理カードのQUOカードが生まれた1987年の2年後、1989年に消費税3%が導入されました。
消費税導入によって1円単位の支払いが増えると考え、小銭のやりとりをスムーズに行えるようにするプリペイドカードシステムの販売を目的に会社が設立されたのです。
その後、セブン-イレブン・ジャパンと契約を締結して「セブン-イレブンカード」の発行を開始。
それを全国共通カードとして使えるようにしようとした際、他のコンビニで使えるのにセブン-イレブンカードではおかしい、ということで「汎用(はんよう)的で無色透明な名前」(クオカード デジタルイノベーションラボ室長の瀧上宜哉氏)、ラテン語由来のQUOカードという名称が生まれたのです。
アプリや個人情報不要で決済できる
20数年間の中で、QUOカードはギフトとして贈呈されるようになり、法人の販促ツールとして使われることが増えていたので、ビジネスも法人を中心にシフトチェンジ。
現在、QUOカードを購入する人の8割は法人だということです。
「現金に近い使い方ができるけれど、見た目は現金らしくない。現金を贈る場合も、のし袋で包んで渡す日本の文化にQUOカードはなじんだのかなと思います」(瀧上氏)
デジタル化したQUOカードPayも、無色透明で誰でも使えるというQUOカードのコンセプトを踏襲。
基本的に法人を中心に展開しています。
QUOカードPayは、スマホに表示したバーコードをお店のレジで読み取ってもらい、支払いができるサービス。
その支払いスタイル、QUOカードPayという名称から、現在多くの企業が参入しているコード決済の1つだと思われるかもしれませんが、コンセプトは大きく異なるのです。
まず、QUOカードなのでギフトという特徴があります。
企業のキャンペーンやお礼、お詫びなどで送るもので、コード決済のようにアプリにチャージしたり、後払いしたりはしません。
基本的に、送る側はメールなどでURLを送り、受け取った人はWebブラウザでサイトにアクセスして券面やバーコードを表示して利用します。
アプリも用意されていますが、特に利用が推奨されているわけではありません。
「アプリは意外にハードルが高いことが独自調査で分かりました。コード決済では必要な本人確認も、多くの情報を入力することに抵抗感を持つ人がいました」
QUOカードPayを使う際はURLをタップするだけ。
個人情報を入力する必要は一切ありません(アプリを利用する場合はメールアドレスの登録が必要)。
非常に気軽に使えるのが最大の特徴なのです。
QUOカードPay
メールで受け取ったURLから電子マネーを取得し、ブラウザに表示されたバーコードから支払えます。
アプリやブラウザは全て自社エンジニアが開発。
「磁気カードと専用カードリーダーのエンジニアはいましたが、スマホアプリの開発をするエンジニアを集めてゼロから開発しました」と瀧上氏は振り返ります。
なぜデジタル化する必要があったのかといえば、顧客である企業からの要望があったからです。
「企業の大型キャンペーンでの需要が増えていました。例えば10万人にQUOカードを贈る場合、10万人の名前や住所を書いてカードを配送するのは大変です。全てがスマホにシフトしていく中で、スマホに届けられるような形にしてほしいという声が多くなりました」(瀧上氏)
もちろん、物理カードのQUOカードの人気は根強く、今後も横ばいで売れ続けると瀧上氏は見ていますが、ギフトカード全体の市場としては、Amazonギフト券のようなデジタルギフトが急激に成長しているのも見逃せません。
ユーザーの要望とこうした市場動向から、2年前にQUOカードPayの導入を決定。
約1年間かけて開発し、2019年3月下旬にサービスを開始したのです。
コラボキャンペーンが続出
QUOカードPayを採用した事例をいくつかご紹介。
Looopでんきは新規顧客キャンペーンにQUOカードPayを採用。
それまでは別のギフトカードを使っていたのですが、配送が大変な上に、利用する際に必要になるアカウントを持っていない人がいました。
QUOカードPayは開始当初からローソンで使え、どこでも誰でも使える点が評価されています。
電子コミックのpixivコミックは、サービスの拡散・販促キャンペーンで採用。
デジタル企業がモノを送るのは負担が大きいということで、デジタルで完結する点が歓迎されました。
キリンビバレッジは19万人に130円のQUOカードPayが当たる自販機のキャンペーンで採用。
自販機でドリンクを購入すると、貼ってあるシールでその場で当たり外れが分かり、当選者はスマホからプレゼントのQUOカードPayを受け取る仕組みです。
それまでやっていたデジタルギフトのキャンペーンに比べて、償還率(当選者が賞品を受け取るために応募する比率)が数倍に上がったということです。
ペヤングは商品パッケージにQUOカードPayのキャラクターをデザイン。
コラボレーション色の強いキャンペーンを展開しました。
当たり商品の中には、かやくやソースと一緒に高級感のあるダウンロードカードを入れ、印刷されたQRコードをスマホで読み取るとバーコードを表示するサイトにアクセスします。
ペヤングの商品は予想の約1.5倍の売り上げを達成したということです。
企業に好評
企業に好評なのは、プレゼントとして扱いやすいという点に加え、企業が伝えたいメッセージを表示できることです。
URLやQRコードを読み取ると、バーコード画面が開く前にキャンペーンページが表示されます。
支払いでQUOカードPayを使う前に、必ず送り主である企業やブランドを確認することになるのです。
Webブラウザで表示できるため、使い方の問い合わせが少ないことも好評となっています。
フジテレビはワールドカップバレー2019で、CM内でQRコードを表示。
視聴者をキャンペーンサイトに誘導する体験型CM「CxM シーバイエム」を展開し、クイズに答えるともらえる賞品の1つとしてQUOカードPayを採用したのです。
この体験型CMは事前のアカウント登録やアプリのダウンロードが不要で、Webブラウザで済むことが特徴の1つだったので、QUOカードPayのブラウザで完結できる点がマッチしました。
ブラウザで完結するので、アプリをダウンロードできない可能性のある海外でも利用可能。
サービス開始半年で予想以上の利用があり、「かなりの手応えを感じている」と瀧上氏は自信を見せています。
なお、QUOカードPayにはアプリもあります。
ユーザーがアプリを使うと、複数もらったQUOカードPayの残高を1つにまとめて使えるようになるのです。
券面の保存も可能。
また、ブラウザで使っている限りでは、URLを他の人に知られると残高を使われてしまう可能性がありますが、アプリを利用するとアカウントにひも付けられるので、万が一URLを紛失してしまった場合も復活できます。
ダウンロードする手間はかかりますが、アプリを使った方が安心でしょう。
今後の展開
多くの人にQUOカードPayを手に取ってもらえる手応えは感じていますが、「キャッシュレス社会を変革していく」といった大それたものとしてではないとしています。
「いろいろなところでキャンペーンをやっていただいて、ちょっとうれしいサービスとして認識してもらいたい」と瀧上氏は言う。
ポイント還元やキャペーンにばかり注目が集まり、継続的に利用してもらうことに苦労しそうなコード決済に対し、QUOカードPayは、贈る側と受け取る側、双方にとって魅力的なサービスとして浸透していきそうです。