コールセンターもしもし日記 吉川徹 (著) フォレスト出版 (2022/3/19) 1,430円

「ひたすら怒られ続ける仕事」

派遣オペレーターが聞き耳立てる

生々しすぎる人間模様

――電話の向こうの知られざる世界

「携帯電話が使えないんですけど! どうなってるんですか! 」

自衛隊員の妻だと名乗った女性は怒り狂っている。

「先月の料金のお支払いの確認が取れていないために、利用ができなくなっています」

「いつからですか! 住所見てわかりませんか! 自衛隊の官舎に住んでる人の電話をなぜとめるんですか! あなた、それでも日本人ですか! 」

知りませんよ、そんなこと。

携帯電話と自衛隊がどう関係あるんですか。

金を払わないあんたが悪いんでしょう。

使った分は払うのが社会のルールじゃないですか。

そう言いたい気持ちを抑え、ヒステリーに怒り狂う声を聞きながら再開の手続きを進めた。

――本書では、知られざるコールセンターの実態だけでなく、電話する側と受ける側の生々しい攻防、そしてそこに生きる人たちの人間模様を描いた。

●もくじ●
まえがき――ひらすら怒られ続けるところ

第1章 コールセンターの異常な日常
某月某日 怒鳴り声: 「さっさと使えるようにしろ! 」
某月某日 派遣社員、男性歓迎:時給1400円の仕事
某月某日 雑談のツケ:何がなんだかわからない
某月某日 オペレーターデビュー:得体の知れない客
某月某日 間断なくかかる電話:意識しないストレス
某月某日 貧乏くじ: 「あんたみたいに聞いてくれた人は…」
某月某日 変わり者: 「シコシコ、週何回ですか?」
某月某日 ドコモショップ: 「そっちのミスですよね」
某月某日 会社員失格:生活を圧迫する養育費

第2章 手強いクレーマーたち
某月某日 もっとも手強いクレーマーとは? :怒り狂う声
某月某日 上の者に代われ:管理職の悲哀
某月某日 にらみつけ:センター長と部長
某月某日 金の要求: 「責任取ってもらえるよね?」
某月某日 タイ行き:人生をやり直すために
某月某日 熱心な誘い: 「リーダーをお願いします」
某月某日 偽造を見破る:auショップからの画像
某月某日 カスタマーサポートセンター:リコール受付
某月某日 電話が鳴らない:応対のレベル
某月某日 SVになりますか? : 「絵にかいたような転職人生だな」
某月某日 寝ながらでもできる仕事:発信の電話はこんなに楽
某月某日 心臓に悪い: 「さっさと用件を話せ! 」
某月某日 苛立たせる人:お願いする立場なのに…
某月某日 ひとり息子:家賃3万5000円のアパートに住みながら

第3章 派遣社員の哀しみとやりがい
某月某日 確定拠出年金って何? :銀行のコールセンター
某月某日 人生設計:正体がバレないように
某月某日 「証券アナリスト」の実力:ひとりよがりの言葉
某月某日 就職試験の内定通知:笑い混じりの軽いノリ
某月某日 慶応大学の学生さんですよ:おばさんの注意
某月某日 同じ土俵:どちらが幸せ?

第4章 私をバカにしないでください
某月某日 浦島太郎:NTTおまとめ請求センター
某月某日 レッテル貼り:課長からのプレッシャー
某月某日 錆びついた経験:不安なモニタリング
某月某日 劣等生: 「どうすればいいんですか?」
某月某日 電話から逃げ出す:持つべきものは…
某月某日 私、障害者なんですよ:操り人形
某月某日 養育費:ズルい人間だと思われたくない
某月某日 欠席連絡:やっとありついた仕事なのに
某月某日 教えてくれないデメリット:同郷の人
某月某日 迷演技: 「兄貴ならいないよ」
某月某日 閉鎖:さよなら、コールセンター

あとがき――コールセンターの、その後

「著者の数々のコールセンターでの実体験を基にした日記帳スタイルの小説。普段見えないコールセンターの社内実態や、お客とのやり取りなどを赤裸々に表現しており、非常に楽しめました。また、登場人物の説明や性格なども非常に面白くまた、分かりやすく表現しており、”自分たちの会社なら、あの人みたいな感じかな”と想像を掻き立て、親密感も出る内容となっています。更に、コールセンターとは別に一社会人で父親である自覚や悩みなども随所に描かれ、ハッとさせられる場面もありました。この本お勧めです。」

「わたしの妻も以前、コールセンターで働いていて、仕事から帰ってくるなり、「嫌な客に捕まった」だとか「客の態度に腹が立った」など愚痴をこぼすことがよくありました。ただ「それが仕事だろ」と私は相手にしませんでした。ところがこの本を読んで、考えが変わりました。すさまじいクレーマーや恫喝にコールセンターの担当者は反論できないどころか、逆に謝らなければならないケースもあるようで、精神的にきつい仕事だと改めて感じました。本書を読んですぐに妻に認識不足を詫びました。妻も読みながらいちいち共感できると話していました。」

「常々電話は難しいと実感する。特にカスタマーセンターには怒ったり焦ったりしてかけてくる人が多く、声の応対ひとつで企業とお客さんの双方が納得できる落とし所に着地しなければならない。民間資格すらあるスキルだが、入れ代わり激しく常に求人があり仕事を探していると目につく。そんな現場の実態がコミカルに描かれている。自分事となるとキツそうだと怯むが、とにかく職を必要とする中で、めげても立ち直りまたこなす姿には、この世知辛い世の中をサバイバルする秘訣すらも読み取れる。それは心の底の、ある強い思いと生活することへの健全さ。私小説のような面白さと感動があった。」


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