
最強の力士には、隠蔽された一番があった――
勝率9割6分2厘、江戸相撲最強の力士・雷電為右衛門。
その雷電が唯一、二度敗れた相手がいた。
相手の名は花頂山。

後世に伝わる花頂山との戦績は、3勝2敗、そして二人の最後の取組となった1預り(その場で勝敗を付けず、保留とすること)。
その1預りには、藩の思惑と力士の誇りがぶつかり合う、隠された物語があった――。
江戸時代の相撲は藩の威信を懸けた代理の戦。
松江藩の江戸留守居役・石積多平太は、藩主・松平不昧が力を入れる相撲力士の育成に関わることに。
過去のある出来事から相撲を憎む多平太だったが、松江のお抱え力士・雷電爲右衞門の圧倒的な強さを前に、徐々に相撲に魅入られていく。
あるとき、雷電は、庄内藩の幕下力士、花頂山に敗北を喫し、更に次の場所でも花頂山に敗れてしまう。
それは、相撲藩・松江藩にとっては、起きてはならぬ一大事であった。
各藩の思惑渦巻く土俵の上で、雷電と花頂山は何を思うのか。
藩の威信、そして一人の力士としての意地を懸けた、両者の最後の一番の行方は――。
梶 よう子
東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。23年『広重ぶるう』で新田次郎賞受賞。
|
|



