煉獄の時 笠井潔 (著) 文藝春秋 (2022/9/26) 3,520円

著者のライフワーク〈矢吹駆シリーズ〉11年ぶりの最新作、800ページの超大作!

1978年6月。

ナディアは著名な作家のシスモンディに、友人・矢吹駆を紹介する。

シスモンディのパートナーであり、戦後フランス思想家の頂点に立つクレールが彼女にあてた手紙が消失した謎を駆に解き明かしてほしいというのだ。

しかし手紙をネタに誘い出されたシスモンディとナディアは、セーヌ川に係留中の船で全裸の女性の首なし屍体を発見する。

事件の調査のためリヴィエール教授を訪ねると、彼は若き日の友人、イヴォン・デュ・ラブナンのことを語り始める。

39年前、イヴォンも首なし屍体事件に遭遇したというのだ――。

時空を超え広がる謎の迷宮に、矢吹駆が挑む!

「小さな活字で2段組、800頁に及ぶ大部な作品で、長さだけでも『哲学者の密室』以上だ。で、戦時中と現代とで時を越えて似たような事件が重なる辺りの設定も『哲学者の密室』に近い。正直なところ、本作を読み進めるのにはかなり苦労した。そもそもボーヴォワールともあろう者が紛失した手紙の探索を、凄腕 “探偵” の評判を得ているにしろ、その時点で一面識もない学生風情(矢吹駆とナディア・モガール)に依頼するところからして現実離れしている。駄作とまで言わないまでも、なかなか他人に薦めにくい代物ではあるだろう」


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