シャイロックの子供たち 池井戸潤 (著) 文藝春秋 (2008/11/10) 770円

「現金が足りないんです」。銀行の支店で起こった現金紛失事件。

捜索の結果、当日の日付の入った札束の帯封が女子行員のショルダーバッグの中から発見され、疑いがかかる。

女子行員は盗ったことを否定し、ミスを隠したい銀行は支店長らが金を出し合って補填をすることに。

そのうち、別の男性行員が失踪――。

東京第一銀行長原支店――中小企業や町工場がひしめき合う場所に立地し、それらの顧客を主な取引先とする銀行を舞台に、〝たたき上げ〟の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績……事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤を描く。

銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。

「タイトルだけでも、余程銀行に訴えたい何かがあるという心中を察した気がします。なんというか、金や出世のためならどんな犠牲も厭わない人間ばかりと皮肉めいているように聞こえます。実際のところですが、金と人生観に対する天秤が、私とは180度違う人物ばかりで戸惑いました。人生で大事なものを担保に置いて犯罪に身を染め、そして個々にやってくる返済期限で周囲に露見されて、次々と破滅していくキャラクターばかりです。もしもこんな職場に身を置いていたら、1週間以内に退職届を出したいぐらいです。ただそれでも、推理小説のように引き込まれる感じがあり、とうとう最後まで読んでしまう魅力があります。果つる底なきに近いです。」

「銀行で働くそれぞれの人間に焦点を当てた短編集です。出世にしか興味がないパワハラ社員、モーレツ社員になるつもりは無かったモーレツ社員、変化の無い日々に疑問をもつギャンブラー等々、銀行の1支店に勤めるそれぞれに焦点を当てながら、最後は銀行での大事件に繋がって行く構成になっています。人の幸せとは何なのか、何の為に働くのか、その辺りを考えさせられる内容です。」

「夢中で読みました。寝不足になるくらい。大銀行の支店で組織と個人のありように悩むそれぞれの人間が描かれていて、その個々人が抱えるそれぞれの問題が、やがて、大きな犯罪の動機に集約されていく。銀行でなくても会社勤めをしたことのある人、あるいはパートナーの組織と個人の軋轢を目の当たりにしたことがある人は、一歩間違えば奈落に落ちる崖っぷちを歩くような怖さをこの小説から感じると思います。個人の価値観が気付かないうちに組織のありように壊されていく。リアリティーがありました。最後の意趣も意外で引き込まれて読みました。」

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