そしてバトンは渡された 瀬尾まいこ(著) 文藝春秋 (2020/9/2)

幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。

その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない〝父〟と暮らす。

血の繋がらない親の間をリレーされながらも、出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が伴侶を持つとき――。

大絶賛の2019年本屋大賞受賞作。

「主人公は父親が3人、母親が2人いて、名字も3回変わる、そんな高校3年生の女の子である。そんな境遇をきいたら、さぞかしつらい人生だろうと感じると思うが、本人は悩みがなくてあっけらかんとしている。そして現在の父親の森宮さんがホントにとぼけてていい味出してる。こういう家族小説を待っていた。
ちなみに、最後はちょっとネタバレ的ではあるけど、東野圭吾の秘密を思わせる終わり方で涙なしには読めません。」

「森宮優子。三人の父親と二人の母親を持ち、姓は3回、家族の形態は7回も変わった。複雑な家族事情をかかえつつも心配事のない日々を今日も送る17歳の高校三年生の日常がつづられる。
・現在の父親である「森宮さん」の”食”と”家族”へのユーモアあふれる姿に何度もニヤリとさせられた。一方で、良い父親であろうとする彼の「胃の痛み」(p255)にはぐっときた。最後の最後になってわかるが、なんてまっすぐな人なんだろう。
・後半になって物語は静かに盛り上がる。「まっすぐに涙を落と」す(p369)水戸氏の強い想い、泉ヶ原氏の穏やかな強さ、梨花さんの娘想い(p329「母親が二度も死んだら……」)、そして……。森宮さんの言葉「優子ちゃんの故郷はここだよ」(p364)といい、水戸氏の手紙といい、愛されることの幸せが、日常のすき間からあふれ出てくる。
・ところで、第1章に23節が二つあるのは、何だろう?(p246,264)
いい親、いい娘、家族になってゆくということ。家族のための自分。ラストのタイトル回収で、胸のすく思いがした。納得の本屋大賞受賞作。素敵な物語に、ただただ感謝。」

「現実ではないのだから、現実味がなくても良い。小説に求めるものは、実際のデータや経験に基づいたノンフィクションなのか?
このお話は、先入観を持って読むべきではないと思う。ひとり娘を日本に残し海外へ旅立った実の父親が、数年後帰国して娘の所在を探さない… 一見あり得ないだろうことでも、すべてを継母に委ねて身を引く父親がいる可能性も否定できない。
苦悩や葛藤を描き、悲しみや苦しみを乗り越えたレジリエンス体験を見たいなら、この本は読まない方がいいかもしれない。小説である以上一種のファンタジーとして、多様な人物像から自分なりに背景を描くことの楽しみを覚える人には、是非読んでほしい!」


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