この「世界」の輪郭を確認したかった。
一九七三年、十二歳の少年は、熱に浮かされたように、日本全国への旅を始めた。
デゴイチ(D51)、シゴナナ(C57)などと呼ばれた、消えゆく蒸気機関車を追いかける旅の中で、少年は「忘れえぬ人びと」「忘れえぬ風景」と出会う。
中学卒業までの四年間に繰り返した北海道や沖縄などへの旅を通して、少年の「世界」は広がっていく。
著者撮影の写真、当時の切符類なども多数掲載。
「いま自分が立つ世界が、どこまで、どんなふうに続いているか。見知らぬ町や村で、どんな人たちが、何をして働き、食べ、暮らしているのか? 自分で出向いて、この「世界」の輪郭を確認したかった」(本書より)
黒川創さんから労作「旅する少年」を送って貰う。これは作家・黒川創の原点とでもいうべきものだろう。ゆっくり読ませて貰おう。
ほんやら洞のの屋号写真の字、これ、ほとんど残ってない写真で鶴見俊輔さんが1972年の6月に揮毫したものだ。 pic.twitter.com/ek53KaLcCn— ほんやら洞/甲斐扶佐義 (@kaifusayoshi) September 30, 2021
【目次】
カラー口絵
旅を始めるまでのこと
寂しさに負けながら
春とともに終わる
旧二等兵と父
初めての北海道
学級新聞と紙パンツ
吹雪がやむとき
福井という原郷
思春期を持て余す
雪女の伝説
沖縄とTシャツ
二つの短い旅の記憶
あとがき
檀ノ浦に行きたいぞ。
春陽堂のWeb新小説の連載、黒川創さんの「旅する少年」を読んで。 pic.twitter.com/Q3ehB2df6y
— 武藤奈緒美 (@naomucyo) June 4, 2020
著者について
作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境[完全版]』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞。主な小説に、『もどろき』『暗殺者たち』『岩場の上から』『暗い林を抜けて』、近著に『ウィーン近郊』がある。
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