沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う 山舩晃太郎 (著) 新潮社 (2021/7/15)

恋人や家族が戯れる海の底で沈没船を探すロマンチスト。それが水中考古学者だ。

今日は地中海、明日はドブ川。激アツの発掘デイズ。

英語力ゼロなのに単身渡米、ハンバーガーすら注文できず心が折れた青年が、10年かけて憧れの水中考古学者に。

その日常は驚きと発見の連続だった!

指先さえ見えない視界不良のドブ川でレア古代船を掘り出し、カリブ海で正体不明の海賊船を追い、エーゲ海で命を危険にさらす。まだ見ぬ船を追うエキサイティングな発掘記。

目次

はじめに

第1章 人類は農耕民となる前から船乗りだった
300万隻の沈没船/水中考古学/船舶考古学/水中遺跡は「タイムカプセル」/陸上遺跡は「ミルフィーユ」/トレジャーハンターの正体

第2章 発掘現場には恋とカオスがつきものだ
発掘シーズン到来「/小さな岩」と命名/沈没船は港町近くで待っている/キールを探せ!/現場に着いても、すぐには発掘できない/船はどこだ?/地味すぎる発掘のリアル/簡単には見つからない/プロジェクトはつらいよ/発掘症候群「/魔の3週間目」/焦りは禁物というものの/どうして見つからない?/2人でこっそり推理/内緒の発掘作業/沈没船の名は

第3章 TOEFL「読解1点」でも学者への道は拓ける
アメリカで初めて受けた洗礼/将来はプロ野球選手/夢をあきらめる/水中考古学との出会い/とにかく留学しよう!/いざアメリカへ/英語が全く分からない!/到着初日にマクドナルドで心が折れる/英語学習の成果は……/絶望の授業初日/パズルのように船を解き明かす/研究室にむりやり転がりこむ/ロドリゴとの出会い/最新技術「フォトグラメトリ」/考古学調査における新たな可能性/博士論文のテーマはこれしかない!/就職難にぶち当たる/道がないなら自分で作る

第4章 エーゲ海から「臭いお宝」を引き上げる
依頼は突然に/アイラブ学術調査/水中考古学者の懐事情/お茶目なトップ研究者/ギリシャの精鋭達/アンフォラ探しは人海作戦/ヤギが放し飼いの島/夢のような調査現場/ギリシャ人リーダーからの洗礼/水深60mの蒼/水中作業は「下見」がポイント/UFOのように動いて撮りまくる/プロジェクト中は太る/保存処理は時間との闘い/発見が止まらない!

第5章 そこに船がある限り、学者はドブ川にも潜る
川の考古学/未発掘の船が川底に/薄い味噌汁のような川/本当に大変なのは水温だった/流れに逆らえ/やっと出会えた初めての古代船/水中での手実測/レア船と発覚!

第6章 沈没船探偵、カリブ海に眠る船の正体を推理する
親友との旅路/サルの大合唱と密林に囲まれて/カリブ海に沈んだ2隻/奴隷船は「不屈の強さ」の象徴/2隻の眠る現場へ/果報は寝て待て/海底では迷子になるな/沈没船探偵の出番/ついに船の正体を解明

第7章 バハマのリゾートでコロンブスの影を探せ
嫌な予感/セレブを横目に発掘スタート/発掘の遅れの理由/発掘チャンスを逃すな/なぜ、そこに穴があるのか/キャラック船とキャラベル船/コロンブスの船のデザインまであと一歩

第8章 ミクロネシアの浅瀬でゼロ戦に出会う
戦争と水中考古学/チューク諸島と日本の歴史/水中文化遺産を守れ/兄貴のような教授/金属製の船はどう朽ちる?/珊瑚の生息地になったゼロ戦「/戦争遺跡は遊び場だった」/過去に遡れる!/戦没者の眠る場所として

おわりに

著者について
山舩晃太郎
1984年3月生まれ。2006年法政大学文学部卒業。テキサスA&M大学・大学院文化人類学科船舶考古学専攻(2012年修士、2016年博士号修得)船舶考古学博士。西洋船(古代・中世・近代)を主たる研究対象とする考古学と歴史学の他、水中文化遺産の3次元測量と沈没船の復元構築が専門。

「面白い本!水中考古学というジャンルがあるのを初めて知りました。専門的だけどお茶目な書き方で、海や川の底での発掘調査がどういうものか、わかって楽しかった。そして探偵顔負けの知的な推理がすごい。特にオススメなのは2章と3章と6章です(3章は生い立ち)。鳥類学者のバード川上先生の本を読んだ時の感じを思い出しました。」

「自分のやりたいことをやるために、英語学習だけで3年も費やし、アメリカの大学院に進学した山舩博士の熱意にただただ感心した。英語による75分の授業ノートをまとめるのに、15時間から20時間もかけて復習したとあった。当方もない作業だっただろう。それでも絶望せずに、一ミリでも前に進もうという著者の凄みが伝わってきた。

こうした苦労の末に続く、修士~博士課程の7年間は夢のような楽しさだったとある。もちろん課題や論文に追われていて楽だったとは思えない。しかし自分の好きなことをやっている充実感が、苦労を苦労をとも感じさせなかったのだろう。

本書を読んで本当に勇気が湧いてきた。英語ができないとか、才能がないとか言う前に、好きなことなら絶望などしている暇はない。1ミリでも前に進むために行動あるのみなのだ。そうした先に本当に充実した人生が待っている。

わたしもまだまだがんばりたいと思えたし、若い方たちには、ぜひとも読んでもらいたい素晴らしい本です。」


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