四日間の奇蹟 浅倉卓弥(著) 宝島社 (2004/1/1)

第1回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞金賞受賞作として、

「描写力抜群、正統派の魅力」
「新人離れしたうまさが光る!」
「張り巡らされた伏線がラストで感動へと結実する」
「ここ十年の新人賞ベストワン」

と絶賛された感涙のベストセラーを待望の文庫化! 

脳に障害を負った少女とピアニストの道を閉ざされた青年が、山奥の診療所で遭遇する不思議な出来事を、最高の筆致で描く癒しと再生のファンタジー。

「本当に大好きな本で、友達にプレゼントしたりしているので、これで三冊目の購入です。心から感動できます。東野圭吾さんの「秘密」と比べられる方がいますが、それぞれ良さがあって、私は別のものだと思っています。私はどちらも好きですが、あえて言うならこちらの方が深いと思います。」

「第1回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作だが、読んでみたらSFファンタジーだった。前半は会話の長さにやや辟易し、中盤で起こる不思議な出来事には、なーんだ、よくあるネタだと少しがっかり。しかし、この小説の凄さはその先にあった。
新人だけあって、とくに前半部の説明のくどさなど、文章に開発の余地はある。しかし、読み進むにつれて、この小説を貫く著者の生命に対する真摯な想いが伝わり、運命に翻弄されながらも懸命に生きる人々の姿に素直に感動できた。
過去に映画化された某小説に酷似しているという批判もあるが、荒筋としては確かに似ているかもしれないけれど、テーマ性は全く違うのでは。(某作品は映画しか観ていませんが。)この作品には、障害を持ちながら生きることの困難さ、死に直面した人間の心理、人は何によって生かされているのか、人生の価値とは・・・と、多くの濃厚なテーマが凝縮されている。ミステリーでも、ただのSF小説でもなく、人生哲学が盛り込まれた感動の傑作だった。」

「「このミステリーがすごい!」大賞第1回受賞作にふさわしい作品。ふだんから本に親しんでいる読者なら、また、本にではなく映画に親しんでいる読者にも、この作品を読み進めて行くと、ある時点で有名な別の作品が頭に浮かぶだろう。ヘタなミステリー・推理小説なら、その時点で読了してしまったかのように白けてしまうのだが、この作品はそうではない。実は、その部分に至るまでのページ数もかなりのもので、そこからこの作品の本質的なストーリーが始まるといっても過言ではないのだが、それも感じさせずにそこまでの枚数、そして後半を一挙に読破させてしまう作者のすばらしい力量がある。
四日間という区切られた期間を長編で丹念に追う筆致は、そうした読者をがっかりさせてしまう可能性をまったくと言っていいほど排除している。事故でその才能を活かせなくなった音楽家、その事故をきっかけに音楽家と暮らすことになり、その才能を受け継ぎつつある少女、また、彼らの人生にとって重要な役割を果たすことになるもう一人の登場人物。彼らの織りなす心情が、作品を通して登場するピアノ曲のように細やかに、そして激しくつづられていく。そうした彼らに訪れた再度の転機となる第二の大きな事故後の数日間のストーリーは、陳腐な表現だが涙無くしてページを繰ることができない。
この「四日間の奇蹟」は、巻末の選評にもあるように、「有名な先行作品」を持つことが弱点であるどころか、それを超えて新たな定番になると言ってもいいくらいの作品と言えよう。惜しむらくは、読者たる私に音楽の素養がまったくないことくらいだろうか。」


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