遭難者がギネスブック級の山が日本に!?

遭難者数がエベレストなどを超えギネスブック級!

800人以上の命を呑み込んだ「魔の山」谷川岳の美しい姿に隠された恐るべき歴史と今も囁かれる山の怪談

美しい紅葉を求めて山へと向かう人々も多いこの季節。

アクセスの良さから登山ビギナーにも人気の「谷川岳」。

しかし、その一方で、800人を超す遭難者の命を呑み込んだ「人喰い山」の異名を持つのです。

群馬・新潟県境にそびえるこの山がなぜこんな二つの顔を持つのでしょうか。

年間4万人が訪れる紅葉の名所が実は「魔の山」だった!?

紅葉の季節を迎え、登山やハイキングに出かける人も多いでしょう。

全国各地に紅葉の名所と呼ばれる山々がありますが、その中には「魔の山」と恐れられるものもあるのをご存じでしょうか。

群馬県、新潟県の県境に連なる三国山脈を代表する谷川岳。

初級者向けの日帰りトレッキングコースから上級者向けの本格的な登山ルートまで様々なコースがあり、最寄りの土合(どあい)駅からのアクセスも良いため年間4万人以上の登山者が訪れる人気の山です。

しかし、その一方で谷川岳は遭難者の多い山としても知られています。

1931年から2020年6月まで死者818名、行方不明者6名を記録。

その数はなんと世界一で、ギネスブックにも「世界一遭難者が多い山」として登録されているのです(諸説あり)。

谷川岳の死者の多さの謎を解くカギは川端康成に?

そう、谷川岳が紅葉の名所と知られる一方で「魔の山」と呼ばれる理由が、この世界でも類を見ない死者の多さなのです。

標高自体は山頂部にあたる双耳峰(そうじほう)のトマの耳で1963m、オキの耳で1977mと、日本の山岳標高ランキングでみても実はトップ100に入りません。

しかし、谷川岳は日本海と太平洋の分水嶺に位置し、天候の変化が非常に激しいため、これにより遭難する登山者が少なくないのです。

ちなみに、川端康成の小説『雪国』の冒頭、

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

と書かれたのは、谷川岳の直下をくぐりぬける清水トンネルのことです。

谷川岳では稜線を挟んで群馬側では晴れていても、トンネルを抜けた越後湯沢や魚沼盆地に大雪が積もっているということがよく起こります。

犠牲者を呼び寄せる断崖絶壁「一ノ倉沢」

ただし、「魔の山」と恐れられる谷川岳ですが、800人を超すと言われる犠牲者の大半を生み出しているのは、ごく一部のエリアだそう。

それが日本三大岩壁の一つに数えられる「一ノ倉沢」です。

標高差800mを超す断崖絶壁でロッククライミングの聖地とされる一ノ倉沢。

昭和30年代にこの何ルートの登攀競争が激しくなり、その結果、昭和33~35年には毎年30人を超す登山者の命を奪ってきました(なお、地元群馬県警発表のデータによると、ここ10年の遭難死者数は、ほぼ年1~3人程度)。

こうして谷川岳は、「魔の山」や「人喰い山」などと恐れられるようになったのですが、そのなかでも有名な遭難事故が「谷川岳宙吊り遺体収容」です。

昭和35年(1960)の9月、一ノ倉沢の通称「衝立(ついたて)岩」を登っていた2人の登山者が滑落し、ザイルで結ばれたまま死亡する事故が発生。

2人の遺体は稜線上から200m下で宙に浮いた状態のままだったのです。

仲間が遺体を収容に向かいましたが、難所ゆえ回収はかないませんでした。

しかたなくザイルを射撃で射抜くことになり、自衛隊が出動し、カービン銃、機関銃、ライフルなど12挺で射撃。

開始から4時間後にようやくザイルが撃ち抜かれ、遺体は“墓標の山”と呼ばれる谷川岳の岩場に激しく打ちつけられながら転がり落ちたのです。

魔の山だけに語られる怪談も数々と…

これだけ多くの人々の命を奪い続けた「魔の山」だけに、怪談めいた噂も数多い。

たとえば、絶対に人の近づけないような谷底から「おーい」と呼ぶ声が聞こえる、

あるいは、一ノ倉沢に向う途中で野営していると、夜中に“ガチャガチャ”と登山用具を鳴らして近づいてくる気配がするもののテントの近くで急にフッと気配が消えてしまうなど、

奇妙な報告例は少なくありません。

なかにはガス(濃霧)に巻かれて下山ルートを見失った時、ふいに前を行く登山者の姿を見かけついていくが、

避難小屋までたどり着き、下から登ってきた登山者に訊くと「そんな登山者とはすれ違わなかったよ」と言われたなどという話も(俗に「指導霊」と言われたり、世界的なクライマーが同じような体験をしたという)。

今ではカフェやグランピング施設(!)ができ、すっかり様変わりした土合駅も、

ひと昔前は、登山者が宿代わりにしていた無人駅の待合室や地下深くのホームが心霊スポットとして恐れられていました(ホームのトイレの鏡に自分以外の人影が映るとか)。

その多くは「山で命を失った登山者の霊魂が家に帰ろうとして……」などと因縁話が続くのですが、

一ノ倉沢の出合い(入り口)や土合駅前など、あちこちに慰霊碑があるため「もしかしたら……」と信じてしまうのも無理からぬところです。

関東からもアクセスがいいため行楽シーズンに訪れる人は多いと思いますが、霊に引き寄せられないよう、十分に注意してもらいたいところです。



おすすめの記事