単にトイレが近いだけではない…夜間頻尿の疾病リスク

生活の質を落とす「夜間頻尿」は高い疾病リスクも潜んでいる

排尿で泌尿器科を受診する患者が一番多く訴えるのは夜間頻尿です。

夜中に2回以上の排尿がある夜間頻尿の高齢者は骨折率が高く、他にも様々な疾病を抱えるリスクや、寿命が縮む可能性もあるという研究報告があります。

夜間頻尿の最大の原因は多尿・夜間多尿で、多飲を止めれば、症状が改善するケースもありますが、中には膀胱や脳神経が原因の頻尿もあり、侮るのは禁物です。

夜間頻尿で寿命が縮む

日本排尿機能学会によれば、男女ともに下部尿路症状の中で最も多いのが夜間頻尿だそう。

夜間頻尿とは夜間に排尿のため1回以上起きなければならず、それにより困難を感じている状態のこと。

夜半の排尿が2回以上になると、生活の質が低下するので、治療が必要とされています。

夜間に2回以上の夜間頻尿を有する高齢者と、1回以下の高齢者を5年間観察したところ、夜間頻尿の人は転倒による骨折が、そうでない人に比べ2倍以上も高く、さらに様々な疾病の罹患リスクも高まる結果となりました。

つまり、夜間頻尿は生活の質を下げるだけではなく、寿命が縮む可能性も否定できないらしい。

東京慈恵会医科大学泌尿器科の古田昭准教授に聞きます。

「夜間頻尿の最大の原因は多尿・夜間多尿です。脳梗塞を気にして、お水をよく飲む方がいますが、それが原因で夜間頻尿になっているケースも多く見られます。ただ飲んだ水が血液に影響するのは約5分間程度なので、水分摂取は脳梗塞予防にはなりません。多尿・夜間多尿以外にも、膀胱蓄尿障害や睡眠障害でも夜間頻尿は起こります」

失禁や尿漏れも

排尿に支障をきたす膀胱蓄尿障害は過活動膀胱や前立腺肥大、間質性膀胱炎などで発症します。

中でも過活動膀胱は男女合わせ国内に、1200万人以上の患者がいると推計されています。

夜間頻尿以外に、切迫性尿失禁や尿漏れなどの症状も呈しているのです。

過活動膀胱は突然、膀胱が収縮して我慢できずに尿漏れする病気。

寒さや水の音を聞いたことなどがきっかけで、脳のコントロールが利かず、急に膀胱が縮みます。

治療薬は膀胱の異常な収縮を抑制する抗コリン薬と、膀胱のβ3受容体に作用して膀胱の容量を増大させるβ3刺激薬があります。

ボトックス注射も

薬物療法は約80%の患者に有効ですが、効果が得られない難治性過活動膀胱にはボトックス膀胱壁内注入療法や仙骨神経刺激療法を行います。

ボトックス療法はボツリヌス菌が作り出す筋弛緩作用の、たんぱく質A型ボツリヌス毒素を使い、膀胱の筋肉を緩める効果があります。

具体的には内視鏡で膀胱の内側20か所にボトックスを注射、効果は半年間程度持続するそう。

仙骨神経刺激療法はリード線を仙骨神経付近に留置、ペースメーカーのような本体から電気刺激を流し、症状の改善を目指します。

「昔も今も、女性を悩ましているのが腹圧性尿失禁で、お腹に力が入った時に漏れてしまう厄介な病気です。このように、排尿に関しては男女関係なく悩んでいる方が多く、まずは専門医で尿漏れの原因を特定し、治療を始めることが大切です」(古田准教授)

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