
ホンダCBF500は、2004年に欧州市場を中心として発売されたネイキッドスポーツモデルです。
日本国内においては、教習車としてあまりにも有名なCB400SF(スーパーフォア)という絶対的な存在があるため、このCBF500は正規ラインナップには並びませんでした。
しかし、その実態は「欧州の過酷な道路事情」や「毎日の通勤・通学」といった、より実用的なシーンで徹底的に鍛え上げられた、極めてタフで信頼性の高い相棒なのです。
前身モデルであるCB500(PC32)から受け継がれた水冷並列2気筒エンジンは、耐久性と扱いやすさにおいて世界中で定評があります。
CBF500は、そのエンジンをより現代的なモノバックボーンフレームに搭載し、環境規制であるユーロ2(後にユーロ3)に対応させながら、デザインを一新して登場しました。
外観は、当時のホンダのデザイン言語である「ニュー・ダイナミック・デザイン」を取り入れ、CB600FホーネットやCB900ホーネットに通じるマッシブで洗練されたスタイルを持っています。
特に、エンジンをフレームの一部として強度部材に利用するダイヤモンド式フレーム構造や、リアのモノショックサスペンションなど、400ccクラスの国内モデルとは一線を画す「欧州車らしい」構成が魅力です。
日本国内ではレッドバロンなどの並行輸入業者が取り扱っていましたが、その数は決して多くありません。
そのため、中古車市場で見かけることは稀ですが、質実剛健な作りと「人と被らない」希少性から、コアなファンに愛され続けています。
生産は2008年頃まで行われ、その後はCBF600や、後のNC700シリーズへとその「ミドルクラス・ベーシック」の魂は受け継がれていきました。
500ccという排気量は、日本の免許制度では大型自動二輪扱いとなりますが、その車格は400ccクラスとほぼ変わらず、むしろスリムで扱いやすいのが特徴です。
大型免許を取ったばかりのビギナーから、飾り気のない道具としてのバイクを愛するベテランまで、幅広い層に「ちょうどいい」を提供する一台です。
最新の電子制御満載のバイクとは異なり、アクセルを開ければ開けただけ進み、ブレーキを握れば止まるという、バイク本来のプリミティブな操作感を味わえる点も、今となっては貴重な価値と言えるでしょう。
今回は、そんな隠れた名車HONDA CBF500について、その魅力やスペック、実際の乗り味を詳しく掘り下げてご紹介します。
Table of Contents
どんなバイク?欧州が求めた「最適解」としてのCBF500
CBF500を一言で表すなら、「究極のベーシック・スポーツ」という言葉が最も相応しいでしょう。
このバイクの最大の特徴は、何と言ってもその心臓部にあります。
搭載される499ccの水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒エンジンは、1990年代から続く伝統あるユニットです。
最高出力は約57馬力を発揮し、決して驚くようなハイパワーではありませんが、低回転域から湧き上がるトルクと、高回転までスムーズに吹け上がる特性が絶妙なバランスで調律されています。
このエンジンは、かつて「ロンドンのクーリエ(バイク便)」たちがこぞって愛用したと言われるほど、並外れた耐久性と経済性を持っています。
車体構成に目を向けると、フレームには角型断面のモノバックボーンフレームが採用されています。
これはエンジン自体を剛性メンバーとして利用する設計で、軽量化と適度な「しなり」を生み出し、ライダーに路面状況を分かりやすく伝えます。
サスペンションは、フロントに41mm径の正立フォーク、リアには調整可能なモノショックを装備しています。
特にリアサスペンションは、当時の国内400ccネイキッドの多くがツインショック(2本サス)であったのに対し、CBF500はよりスポーティなモノショックを採用しており、路面追従性が高く、見た目もモダンです。
ブレーキシステムには、フロントに2ピストンキャリパーと大径ディスクを装備し、オプションでABS(アンチロック・ブレーキ・システム)搭載モデルも用意されていました。
2004年当時、ミドルクラスのネイキッドでABSが選択できるというのは先進的であり、欧州市場での安全意識の高さを物語っています。
スタイリングは、無駄な装飾を削ぎ落とした機能美に溢れています。
燃料タンクの形状はニーグリップがしやすく、シートは長時間乗っても疲れにくい適度な硬さと広さを持っています。
メーター周りもアナログの2眼メーター(スピード&タコ)を採用し、視認性は抜群です。
余計な電子デバイスがない分、メンテナンス性も高く、自分で整備を楽しみたいサンデーメカニックにとっても魅力的な素材と言えます。
日本国内のCB400SFが「優等生」であるなら、CBF500は「頼れる相棒」といった印象です。
派手さはありませんが、石畳の旧市街からアウトバーンまでを走り抜けるために必要な性能が、ぎゅっと凝縮されています。
CBF500 インプレッション ~飾らないからこそ、面白い~
実際にCBF500に跨ってみると、まず感じるのはその「親しみやすさ」です。
シート高は770mmと標準的な数値で、タンクのスリムな形状のおかげで足つき性は良好です。
身長170cm程度のライダーであれば、両足のかかとまでしっかりと接地する安心感があります。
ハンドル位置は自然で、極端な前傾姿勢を強いられることもなく、長距離ツーリングでも疲労が蓄積しにくいポジションです。
エンジンを始動すると、パラレルツイン特有の「ドルルル」という少し野太いアイドリング音が響きます。
4気筒エンジンのような滑らかな「フォーン」という音とは異なり、エンジンの鼓動を直接感じるような脈動感が心地よいです。
走り出しのクラッチ操作は非常に軽く、低回転からのトルクが太いため、発進で気を使う必要は全くありません。
街中での走行では、この低中速トルクの太さが最大の武器になります。
頻繁なギアチェンジをせずとも、アクセルをひねるだけでググッと車体を前に押し出してくれるため、ズボラな運転も許容してくれる懐の深さがあります。
ハンドリングは極めてニュートラルです。
最新のスーパースポーツのような鋭い切れ味はありませんが、ライダーの入力に対して素直に反応し、思った通りのラインをトレースしてくれます。
特にワインディングロードでは、ヒラヒラと身を翻す軽快感があり、絶対的な速度は高くなくとも、「バイクを操っている」という充実感を味わえます。
高速道路での巡航性能も、500ccの余裕が感じられます。
100km/h巡航は余裕の範囲内で、そこからの追い越し加速でも不足を感じることはありません。
ただし、ネイキッドモデルゆえに風防効果はないため、長時間の高速走行では風圧との戦いになりますが、車体の直進安定性が高いため、フラつきによる恐怖感は皆無です。
サスペンションは欧州仕様らしく、少しコシのある硬めのセッティングに感じられます。
日本の綺麗な舗装路では少しゴツゴツと拾う場面もありますが、速度域が上がるとピタリと安定し、路面をしっかりと掴んでいる感覚が伝わってきます。
ブレーキは、シングルディスクながら必要十分な制動力を発揮し、コントロール性も良好です。
総じて、CBF500は「スルメのようなバイク」です。
派手なカタログスペックや電子制御の介入はありませんが、乗れば乗るほどその素性の良さ、基本設計の確かさに気づかされ、手放せなくなる魅力があります。
HONDA CBF500 スペック詳細
CBF500の主要諸元をまとめました。
日本国内の400ccモデルと比較すると、わずかな排気量の差ですが、トルクの厚みやギア比の設定など、アウトバーン走行も視野に入れた欧州車らしい数値が見て取れます。

| 車名・型式 | ホンダ・CBF500 (PC39) |
|---|---|
| 全長×全幅×全高 | 2,170mm × 765mm × 1,110mm |
| ホイールベース | 1,480mm |
| シート高 | 770mm |
| 車両重量(乾燥/装備) | 約183kg / 206kg (ABSモデルは+数kg) |
| エンジン形式 | 水冷4ストローク DOHC 4バルブ 並列2気筒 |
| 総排気量 | 499cc |
| 内径×行程 | 73.0mm × 59.6mm |
| 最高出力 | 57PS (42kW) / 9,500rpm |
| 最大トルク | 45N・m / 8,000rpm |
| 燃料供給方式 | キャブレター (VP型 34mm) |
| 燃料タンク容量 | 19.0リットル |
| 変速機 | 常時噛合式6段リターン |
| タイヤサイズ(前) | 120/70 ZR17 |
| タイヤサイズ(後) | 160/60 ZR17 |
| ブレーキ(前) | 油圧式シングルディスク 296mm 2POT |
| ブレーキ(後) | 油圧式シングルディスク 240mm 1POT |
みんなのインプレッション ~オーナーのリアルな声~
日本国内では希少なCBF500ですが、実際に所有しているオーナーや、海外での評価を含めたリアルな声をまとめました。
良い点だけでなく、維持する上での苦労など、逆輸入車ならではの意見も散見されます。
『大型免許を取って最初のバイクとして購入しました。教習車のCB750に比べて圧倒的に軽く、取り回しが楽です。パワーも使い切れる範囲内で、公道を走る分には全く不足を感じません。燃費もリッター20km以上は確実に行くので、お財布にも優しいです。』
『高速道路を使って長距離ツーリングをよくしますが、19リットルのタンク容量が素晴らしいです。航続距離が長いので、給油ポイントをあまり気にせず走れます。ただ、カウルがないので風圧は凄いです。汎用のスクリーンを付けたら快適になりました。』
『エンジンがとにかく丈夫だと聞いて買いました。走行距離が5万キロを超えましたが、基本的なオイル交換だけでノントラブルです。パラレルツインの振動は多少ありますが、それが逆にバイクに乗っている感があって気に入っています。』
『部品の調達が少しネックです。消耗品(パッドやチェーン、オイルフィルター)は国内のCB系と共通のものが多いので用品店で買えますが、専用の外装パーツなどは海外取り寄せになることがあり、転倒した時の修理費や納期が怖いです。』
『CB400SFと迷いましたが、VTECのような切り替わりがなく、下から上までフラットにトルクが出るこちらの特性の方が好みです。街乗りでのゴー・ストップが多いなら、CBF500の方が楽に走れると思います。ABS付きなので雨の日も安心感があります。』
『足回りが少し硬い印象です。日本の峠道のような細かいギャップがある場所では少し跳ねる感じがしましたが、リアサスのプリロードを調整したらだいぶ良くなりました。自分好みにセッティングする楽しみがあるバイクです。』
『デザインがシンプルで飽きがきません。最近の昆虫のような尖ったデザインではなく、オートバイらしい丸目一灯のスタイルが良いです。カスタムパーツは専用品が少ないですが、工夫して取り付けるのもまた一興です。』
『中古で購入しましたが、前のオーナーがしっかり整備していたようで調子が良いです。ただ、キャブレター車なので、冬場の始動性は少し儀式が必要です。チョークを引いて暖気をする時間を楽しむ余裕がある人向けかもしれません。』

