曾祖父が謀反に連座したことから、馬氏は長く官位から遠ざかっていた。
王莽の世になってようやく官位を得た兄たちはそれぞれ家を出て、末子の馬援は家主となるが、ひょんなことから追われる身になってしまう。
北地へ逃げた馬援は牧場経営を始め、成功を収めるものの、王莽への反乱軍が各地で蜂起、新たな政権が乱立する戦国の世に、馬援も巻き込まれてゆく。
光武帝・劉秀のもとで後漢統一のために力を尽くした武将・馬援の若き日々を描く。
馬上の星_小説・馬援伝/宮城谷昌光
中央公論新社
後漢の光武帝に仕えた馬援の生涯。光武帝の物語『草原の風』はまさに光輝く爽やかな風の物語でしたが、本書は地味ながらも心に響く物語です著者は、歴史の脇役を掬い上げて光をあて、史伝にない部分を補い、生き生きと活躍させるのが、本当に上手い pic.twitter.com/JiHASnmxO7
— つつみん@読書垢もどき (@34PtgClzqWRP9qa) December 17, 2022
「仮に『草原の風』を本記とするなら、『呉漢』と本作は列伝と言ってもよいのではないでしょうか。
主人公・馬援は前二作では触れられていなかった分、全く別の視点(地理的にも立場的にも)で後漢王朝草創期の物語を楽しむことができました。
とても面白く、読み終えるのを惜しみながらもあっという間に読了してしまいました。なんと言っても登場人物の生き方を通して、人は如何に生きるべきかを問われるのが宮城谷作品だと思っているので、今回もメモを取るべきことが多くありました。
ここに描かれている馬援の生き様は、昨今の
拝金的で、無駄を嫌い促成を尊び、利己的で他者より優位に立ちたがり、手軽に個性を求める世相に対する、宮城谷先生からのメッセージではないかと、個人的には感じられました。」
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