ブッチャー・ボーイ パトリック・マッケイブ(著)、矢口誠(翻訳) 国書刊行会 (2022/1/27) 2,640円

アイルランド版〈ライ麦畑でつかまえて〉+〈時計じかけのオレンジ〉とも称された、鬼才パトリック・マッケイブが鮮烈で瑞々しい筆致で描く問題作にして感動作。

映画化もされた傑作長篇(1992年作)がついに邦訳。

〈いまから二十年か三十年か四十年くらいまえ、ぼくがまだほんの子供だったときのこと、小さな田舎町に住んでいたぼくはミセス・ニュージェントにやったことが原因で町のやつらに追われていた〉

アイルランドの田舎町、飲んだくれの父と精神不安定な母のもとで、フランシー・ブレイディーは親友のジョーと共に愉快な日々を送っていた。

そう、ミセス・ニュージェントから「あんたらはブタよ!」という言葉を浴びるまでは……あらゆる不幸に見舞われた少年が、狂気と妄想と絶望の果てに見い出したものとは何か?

解説=栩木伸明

著者について
1962年生まれ。慶應義塾大学国文科卒。翻訳家。主な訳書にファウアー『数学的にありえない』(文藝春秋)、バリンジャー『煙で描いた肖像画』(創元推理文庫)、ウェストレイク『アルカード城の殺人』(扶桑社ミステリー)、『レイ・ハリーハウゼン大全』(河出書房新社)、バーンスタイン『メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロード』(玄光社)、デイヴィス『虚構の男』(国書刊行会)などがある。

フランシー少年の語りに翻弄されながら、この悲喜劇を原書で読み終えたときの衝撃は忘れられない。
しかしいま、あらためて翻訳で読み、その恐ろしいほどの現実感に体が震えた。
アイルランドから世界に打ち込まれたこの楔はさらに鋭く深く胸に刺さる。
金原瑞人(翻訳家・法政大学教授)

今まで読んだ本で泣いたのは、新美南吉『ごんぎつね』、
筒井康隆『農協月へ行く』、菅原孝標女『更級日記』、そしてこの『ブッチャー・ボーイ』。
『ごん…』は清さに、『農協…』は哀れさに、『更級日記』は切なさに。
『ブッチャー・ボーイ』この少年の物語は、痛さに泣く。殴られるように泣いた。
1ページ目からラストまで、一字一句すべて読む者を離さない迫力のドライブ感。
姫野カオルコ(小説家)


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