徴兵体験 百人百話 阪野吉平 (著) 17出版 (2015/7/6) 1,650円

110人の徴兵体験談集。新聞もラジオもない、小作・奉公人より兵隊は給料がもらえて食うものも心配ない、という今からは想像することも難しい当時の人々の生活環境。

3年間で戦死者なしという中隊。

120人の中で生きて帰れたのは9人という中隊。

毎日が死と隣り合わせだった人。

一度も戦闘になったことがないという人。

食うには困らなかったという人。

排泄物まで洗って食ったという人。

真っ青になってブルブル震えて飛んで行った特攻隊員。

「この戦は負け戦だ。こんなところで死んではダメだ」と言った中隊長。

軍隊生活が楽だったという人。

軍隊よりシベリア抑留の方が楽だったという人。

捕虜を度胸試しで殺したという人。

死刑前日に釈放されたという人。

片足を失った人。

片目を失った人。

病気で兵役を免れた人。

終戦を知って泣く人、喜ぶ人。

昭和17年に兵隊になり日本に帰って来たのは29年という人。

今も目に焼き付いていることがあるがそれは話せないという人。

そろそろお迎えが来るから話そうという人。

聞き手、阪野吉平の中庸なペンが作品を引き立てる。

戦争記録として貴重な証言もある。

「書名の通り徴兵体験者、110人の体験の聞き書き。それも山形県置賜地方の人達だけの声。召集され、戦争に行った人の中で、もちろん戦闘で死んだり、マラリアなど病気で亡くなったりして、帰って来れなかった人達も沢山いますが、この110人の声は、帰って来れなかった人達の声でもあるのかも知れません。1人見開き2ページと文章は少ないが、耳を傾ければ、充分聞こえてくる、目の当たりに見えてくるものがある、と思います。人間社会はおかしなもので、階級や所得が上になればなるほど、いわゆるエライ人ほど大きな嘘をつく人が多いが、庶民の素朴な声は嘘ではない。嘘のつきようがない本当が、この聞き書きによる記録にはある、と思います。」

「貴重な戦争体験を根気よく集めて一冊にまとめた事は大変評価されます。ただ、本当に悲惨な体験や、おそらく実際にあった残虐な体験については記録する事を止められたり、話してもらえなかったりしている事で、戦争の残虐性が弱められてしまった事は残念です。」

「市井の人の普通の人の声が聞こえる。貴重な本です。多くの人が読むべきです。」


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