逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白 高橋ユキ (著) 小学館 (2022/6/1) 946円

「どうりで捕まらないわけだ」(道尾秀介)

自転車全国一周に扮した富田林署逃走犯、尾道水道を泳いで渡った松山刑務所逃走犯、『ゴールデンカムイ』のモデルとなった昭和の脱獄王……彼らはなぜ逃げたのか。なぜ逃げられたのか。

異色のベストセラー『つけびの村』著者は、彼らの手記や現場取材をもとに、意外な事実に辿り着く。

たとえば、松山刑務所からの逃走犯について、地域の人たちは今でもこう話すのだ。

〈不思議なことに、話を聞かせてもらった住民は皆、野宮信一(仮名)のことを「野宮くん」「信一くん」と呼び、親しみを隠さないのである。

「野宮くんのこと聞きに来たの? 野宮くん、って島の人は皆こう言うね。あの人は悪い人じゃないよ。元気にしとるんかしら」

「信一くん、そんなん隠れとってもしゃあないから、出てきたらご飯でも食べさせてあげるのに、って皆で話してました。もう実は誰か、おばあちゃんとかがご飯食べさせてるんじゃないん、って」〉(本文より)

【編集担当からのおすすめ情報】
『つけびの村』で山口連続殺人放火事件を「村人たちの噂」という視点から見つめ直した気鋭のライターの、新たなテーマは「脱走」。警察に一度は捕まりながら、脱走に成功してしまった者たちの告白や足跡は、読む側に“禁断のスリル”をもたらすことでしょう。なぜ人は脱走にスリルを感じてしまうのか、それはいけないことなのか。著者はこの本でそう問いかけます。特別収録された作家・道尾秀介氏との対談でも、犯罪とフィクション・ノンフィクションとの距離感について議論を交わしており、そこも読みどころの一つとなっています。

「逮捕後に警察署から脱走し、自転車で「日本一周の旅」をしながら逃亡生活を送っていた男を取り上げていると知ってamazonで購入。事件当時にニュースで観てから、この犯人は一体、何がしたかったのか気になっていたが、一読して「なるほどなぁ・・・!」と思わされた。著者の出世作である『つけびの村』と同様、事件の現場を丹念に取材し、犯人本人とも手紙のやり取りをして、事件の輪郭を浮かび上がらせていく。身バレしないで逃亡生活を続けるために、犯人が考えついた「自転車で日本一周する人」というキャラ設定は秀逸すぎるし、実際に49日間も逃げ果せたのだから凄い。逮捕されるまでの経緯も詳細に描かれていて読みごたえがある。
ちなみに、この逃亡犯は警察の留置場に入れられていた際、弁護士との面会後に、面会室のアクリル板を蹴破って逃走している。発見が遅れたのは当時の留置担当だった巡査部長が、スマホでアダルト動画にくぎづけで事態に気づかなかったからだそう。犯罪者が「逃げるが勝ち」かどうかはともかく、警察側からすれば「逃げられたら負け」なのは間違いない。」


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