データで知る現代の軍事情勢 岩池正幸 (著) 原書房 (2021/5/11)

世界にはどんな軍備がどのように配備されているのか。

そしてどのような影響をもつのか。

国際情勢を、「軍事」の立場から、日本との関係を軸に、地図や図表などで示しながら紹介。

地政学的な見地からリアルな軍事情勢を俯瞰する。

東アジアは米中ロの世界戦略が交錯する地域であり、東アジアの軍事情勢を深く理解するには世界の軍事情勢に対する俯瞰的な知識が不可欠である。そこで、本書においては、地政学的構造や軍事機構を単純化して整理することにより、複雑な構造を伴って成立している国際的な軍事的均衡やその結果生じる軍事的抑止の総体である「現代の国際軍事情勢」を、軍事に詳しくない人でも理解できるように努めて記述するとともに、世界の軍事対峙の現場を紹介する中で比較的詳しく東アジアについて解説した。
本書で取り扱うデータは、誰でもアクセス可能な資料から引用している。特に、英国のシンクタンクである国際戦略研究所が毎年発行する『ミリタリーバランス』は、偏りのない網羅的なデータを提供してくれるため、地域的な情勢分析のみならず、グローバルな情勢把握に最適である。『ミリタリーバランス』は1959年に小冊子として発行されてから既に60年の歴史を持っており、極めて高い権威を持つ軍事データベースとなっている。各国の陸海空軍や核兵器を扱う戦略部隊の規模、装備、部隊編成などについて、年鑑としては比較的薄いものでありながら、内容としては濃密なデータが詰まっている。
これに加えて、ストックホルム国際平和研究所の発行する『SIPRI年鑑』とネット上でアクセスできるSIPRIデータベースとともに、HIS Markit社が提供する『ジェーン年鑑』の情報を使用している。SIPRIは兵器の国家間取引や核兵器の状況を見るのに適しており、また、ジェーン年鑑は個別の兵器の諸元や各国軍隊の組織構成、訓練・演習などの状況を把握するのに適している。また、各国政府が発行する国防白書のデータも重要であり、国防政策の基本的考え方や将来に向けての方向性を考える上で重要な資料となっている。
(本書「はじめに」より)

【目次

はじめに

第1章 国際軍事情勢の全体構造
第1節 通常戦力の状況
第2節 核抑止の状況
第3節 宇宙、サイバー電磁空間

第2章 米国、中国とロシアの安全保障環境
第1節 米国
第2節 中国とロシア

第3章 軍隊の基礎知識
第1節 陸上戦力
第2節 海上戦力
第3節 航空戦力
第4節 弾道・巡航ミサイル戦力
第5節 核戦力

第4章 米中ロ三大軍事大国の戦力比較
第1節 通常戦力
第2節 核戦力

第5章 米中ロが抱える軍事的課題と新たなチャレンジ
第1節 米国――軍事大国の本当の姿
第2節 遠征軍である米軍を意識する中国とロシア

第6章 軍事的対峙の現場その1――東アジア
第1節 東シナ海
第2節 台湾
第3節 オホーツク海
第4節 朝鮮半島
第5節 米軍のプレゼンス

第7章 軍事的対峙の現場その2――東欧
第1節 兵力の概況
第2節 米国・NATOとロシアとの対峙の前線
第3節 ロシアが緩衝地域としたいウクライナ東部
第4節 米軍のプレゼンス

第8章 軍事的対峙の現場その3――中東
第1節 兵力と国力の概況
第2節 ユダヤ対アラブという伝統的な対立構造
第3節 局地的な軍事バランス
第4節 米軍のプレゼンス

第9章 パックス・アメリカーナの軍事的側面――米軍のプレゼンスの意味

終わりに
巻末別表
あとがき

【著者について】
岩池 正幸(いわいけ まさゆき)
上智大学法学部卒業。平成3年防衛庁入庁。在中国日本大使館一等書記官、防衛省情報本部分析部長、内閣官房内閣情報調査室内閣情報分析官を歴任。令和元年、米国防大学国際戦略研究所客員研究員(防衛省職員兼職)。現職、内閣府参事官。

「あまり軍事について考える事がないが、大事な視点。軍事面から見ると、北方領土が返還される事はないと理解できる。次は、防衛白書を手に取ってみようと思う。」

「最近、地政学を解説する書籍はたくさん出版されてます。本書は地政学から政治や経済や歴史の要素をほぼ省き、地域(地球上)の軍事力配置図を広範に解説した書籍です。
基本的に公開されたデータをもとに、ひたすら客観的に分析してるので西側の視点で、或いは日本の視点で「?すべき」とか「~が危惧される」という語り口はありません。地球のどの位置にどんな部隊が、どんな射程の兵器が配置されてるか、どんな衝突が起こり得るか、などが淡々とした口調で紹介されていきます。
基本的に本書は米中露の軍事対立が主なテーマなので、最も重点が置かれるのは戦略兵器、即ち核ミサイルによるミリタリーバランスについてページが割かれてます。その後に米中露の軍の概説、次にアメリカが中露と対峙する東アジアと東欧、そして最後に中東軍事情勢の全体像が紹介されます。
政治や経済について視野に入ってませんが、それでも冷徹に語られる戦力配備の後に国家の意志や事情は否応なく透けて見えます。」

「国際軍事関係について、現地情勢も交えて解説してくれる。米軍、中国軍、ロシア軍の記述は詳細で、なかでもグローバルに機動展開できる米軍のプレゼンスは圧倒的だ。特に、空母は中国とロシアが各1隻(現時点では中国は2隻)しか保有しないのに対し、米国は11隻も保有する。こうした軍事バランスだから、中国とロシアは自国周辺の防衛が基本戦略となっているとする。本書は、この三国が対峙する地域として、東アジア、欧州及び中東の地域軍事情勢も解説している。」


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