狙撃手の祈り 城山真一 (著) 文藝春秋 (2023/10/20) 1,870円

離婚届を置いて失踪した妻、発見された銃弾、28年前の未解決事件。

平穏な生活が一変する秘密と嘘。

東京都北区十条で楽器店を営む青井圭一。

雑誌記者の妻・沙月とは取材がきっかけで知り合った。

ある夜、妻の沙月が圭一に差し出したのは離婚届だった。

明日から一週間取材に行くから、帰るまでに答えを出してほしい――。

確かに、圭一の友人のミュージシャンの不倫スキャンダルを沙月がスクープしたことで、最近夫婦関係はぎくしゃくしていた。

しかしそれが離婚になるとは思えない。

そして一週間後、電話口で「このまま家に帰ったら、許してくれる?」という言葉を残して沙月は消息を断つ。

ほぼ時を同じくして、亡くなった圭一の叔父の遺品の中から銃弾が発見される。

叔父の友康はこの楽器店の先代で、幼い頃に両親を亡くした圭一の育ての親でもある。

平穏な人生を送っていた叔父と銃弾が結びつかず混乱する圭一。

追い打ちをかけるように、その銃弾が28年前に起こった警察庁長官狙撃事件に使われたものと同じ型という可能性も浮上する。

警察庁長官狙撃事件は未解決のまま公訴時効を迎えていた。

そして、沙月がこの未解決事件を追っていたことも明らかになる。

叔父と長官狙撃事件の間に何らかの関係があるのか。

もしあるとしたら叔父はどう関わっていたのか。

今回の沙月の失踪はその未解決事件の取材と関係しているのか。

この世界が今日も明日もこのまま続くだろう、そう思っていた人間が、期せずして社会の深淵を覗くサスペンスミステリー。

「横山秀夫作品のような堅実さと重厚さがある。淡々とした文章の中に熱い感情が込められており、ページを捲る手が止まらなかった。警察小説が好きな方、公安と刑事部の複雑な関係もあるあるで、自分は好みです。
先の読めない展開も素晴らしかった。」


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