犬のかたちをしているもの 高瀬隼子 (著) 集英社 (2022/8/19) 550円

「おいしいごはんが食べられますように」祝 第167回芥川賞受賞

新芥川賞作家のデビュー作が文庫化!

「子ども、もらってくれませんか?」彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。

薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていたという。

唐突な提案に戸惑う薫だったが、故郷の家族を喜ばせるために子どもをもらおうかと思案して──。

昔飼っていた犬を愛していたように、薫は無条件に人を愛せるのか。第43回すばる文学賞受賞作。

「本自体は読みやすく、主人公の感じていることも女性性を持つ身として理解できるところが多く物語の面白さも感じました。ただ、主人公の発する言葉が異様に少なく、主人公の周りの人の台詞と、それに対する主人公の感情および身体の状態、その描写が多すぎて途中から読んでいて憂鬱な気持ちになりました。負のエネルギーの作品以外にも、何か救いのある作品も読んでみたいと思いました。」

「とても読みやすかった。しかし、主人公のように自分の思考を文字化するひとは、小説の中にしかいないか、小説の中でも生きづらいだろうなと思った。それくらい、恋愛、セックス、生殖、家族について文字として反芻し、反芻し、しかも消化できない。こういう小説、嫌いじゃないです。もっと、作者の作品を読もうと思いました。」

「祖母の家の隣にある、中華料理屋の裏で拾った捨て犬、ロクジロウ。主人公のロクジロウへの描写が、本当に犬が好きなのだな、と伝わってくる。
「しっぽを地に付けて、体の力を抜いてくつろいでくれば、それでいい」、そんな風に犬を愛す主人公が、同じ熱量で人を愛せるか。
選考委員である江國香織が選評で書かれた以下の文章が印象に残った。
「作中にときどき顔をだす死んだ犬が効いていて、ああ、わかる、犬を愛するみたいに男の人を愛するのは難しいわ、と個人的に共感し、しかしもしそれが可能だとして、犬を愛するように男の人を愛するのは正しい(あるいは良い)ことなのだろうか、と考えさせられもしました。」
この作者の作品を次作も読みたいと感じた。」


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