ジョン・フォード論 蓮實重彦 (著) 文藝春秋 (2022/7/21) 3,410円

「古典的な西部劇の巨匠」というレッテルからジョン・フォードを解き放ち、画面そのものを見つめる快楽へとひたすら誘う――『監督 小津安二郎』と双璧をなす著者集大成。

主要監督作の詳細なフィルモグラフィや貴重なスチール写真を多数収録。

「10年以上前から噂されていたついに蓮実御大のジョンフォード論が出ました。文藝で出るたびにまとめて読みたかった。まずこれが作品論ではないこと大特徴、ボグドナヴィッチがフォードの映画は1本1本の評価でなく何本も連鎖することに価値があるみたいなことを書いていたが、僕は「捜索者」があれば良いのではと反発したけど、本作はまさに全作品を解体しジョン・フォードをまさに分解統合し、フォードと言う名の映画を浮き立たせる世界でこれだけしかない凄わざの大作と思う。
表現が回りくどく読みにくい(フォードの映画の様にシンプルにして欲しいとは思うけど)とかこじつけっぽいとかあったりするけれど、これすべて唯我独尊的蓮実節の魅力で読めてしまう。投げる身振り論は圧巻です。うそっ!とか言う感じで読み進めると深化してゆき、納得してしまう。それがこの長大な論のなかで見えて来るのが素敵な体験。アンダーソン批判なども納得。註がこれまた面白く読み応えある。さすがと舌をまくばかり。久方ぶりのジョンフォード、もう一度蘇る。」

「大著であり未だ読了してはいないが、明らかに著者の記憶違いであろう以下の記述が惜しまれるので、それを指摘し訂正を促したい。
> たとえば、『プリースト判事』における寡夫の判事を演じているのはウィル・ロジャースなのだが、彼が、
> ふと思いついて裏庭に椅子を持ち出し、そこにしつらえている墓の前で亡き家族を追悼するときもまた、
(P.109より引用)とあるが、ウィルが折り畳み椅子を持って出かけたのは裏庭ではなく、
教会の共同墓地と思しき場所であると思う。なぜなら、妻の墓前の位置から、画面左のやや離れた位置にある隣家の令嬢エリーの母の墓に、謎めいた男が詣でている姿をウィルが偶然盗み見てしまうという、物語の進行上は重要なシーンがあるからである。YouTubeで該当シーンを確認したところ、暗くて共同墓地であるか裏庭なのか判然としないが、鐘の音が1回鳴っている(夜中の1時である)ことからしても教会内の墓地であることを印象付ける演出意図ではないかと思われる。」


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