ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治 (著) 新潮社 (2019/7/12)

児童精神科医である著者は、多くの非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。

少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いたが、問題の根深さは普通の学校でも同じなのだ。

人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々に焦点を当て、困っている彼らを学校・社会生活で困らないように導く超実践的なメソッドを公開する。

 

「児童精神科医から少年院の法務技官になり、そして現在は大学教員として臨床心理系の講義を担当する著者が「コグトレ」の開発者です。もうおわかりでしょうが、「1日5分で日本を変える」方法とは、朝の会で「コグトレ」をやって学習の土台である認知機能のトレーニングをすることです。医療少年院での経験を元に、その必要性を説いたのが本書です。認知行動療法が「認知機能という能力に問題がないこと」を前提に考えられた手法であるとか、学校現場では境界知能の支援まで手が回らないなど、あらためて気づかされることが本書にはたくさんあります。小学校低学年が最大のチャンスです。思春期真っ只中の中学生になってからでは遅すぎます。是非とも、多くの学校関係者に読んでいただき、子どもたちのためにできる範囲で取り組んでいただきたいと願っています。学校の「朝の5分」は貴重であり、とても忙しいのです。」

「少年犯罪を犯した子供たちに長期に深くかかわった専門家の経験や意見は読むに値します。が、読者側に忍耐が必要な読みづらい本です。内容が難しいのではありません。3割ほど読んだあたりから、いわゆる「耳タコなほど聞かされた話をまた聞かされている」という感覚になってくるんです。前半は1章に1,2回そういう感覚になりますが、その感覚はどんどん増え、後半はほぼ「はいはい、またさっき言ってたアレね」感でいっぱいに。後半は新しい記載がある部分を探しながら読むという感じになりました。内容は悪くないので、是非とも編集し直してほしい。」

「何か問題を起こしたときに、その行為を反省できれば、その人は成長できるであろう。しかし、自分の行為やそれが周囲に与える影響を認知することができなければ、反省することすらできない。その結果として、成長できずに同じ問題を繰り返してしまう。本書は、このような認知機能が低いがゆえに問題行動を起こす人々をいかに更生させるか、認知機能を向上させるか、そしていかに社会をよりよくしていくかをテーマにしている。

多くの事例は、著者が勤務している少年院での体験が語られているのだが、彼らに共通する特徴、つまり認知機能が低いことによる行動の傾向というのは、我々が実生活で出会う人々にも見て取れる傾向でもある(詳しくは本書を参照されたい)。つまり、程度の差はあれ、実生活をなんとかこなせるレベルではあるが認知機能が低い人々は、我々の周囲にも多数存在するのだ(本書では「境界知能」と表現されている)。

読了後に思ったのだが、職場にいるあの働かない人はもしかしたら「境界知能」なのかもしれない。あれだけ働かず、周囲を腐らせ、組織に悪影響を与えているにもかかわらず、一切悪びれず、かつ周囲を批判している。確かに認知機能が弱く反省することが出来ないならば、全ては他人のせいとなり、自分は正当化されるのだろう。この認知機能の問題、少年院や刑務所の塀の中だけの問題ではない。我々の実生活の場でも、この問題を検証する必要があるように思う。」


(クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事