WHOLE BRAIN ジル・ボルト・テイラー (著), 竹内薫 (翻訳) NHK出版 (2022/6/28) 2,200円

もう人間関係、世代間ギャップ、依存症で悩まない! 脳科学者が脳卒中に学んだこと。

左脳の脳出血により、右脳の機能しかなくなったとき、脳科学者のジル・ボルト・テイラー博士は、それまでの認知機能、身体機能を失ったにもかかわらず、この上もない幸福感に包まれた。

8年間のリハビリの末、すべての機能を取り戻した博士が、脳卒中の実体験と神経解剖学の科学的見地から得た新しい知見を惜しげもなく開示する。

左脳は思考、右脳は感情というステレオタイプから脱却し、脳の仕組みを知れば、考え方・感じ方の嫌なクセは変えられる。

脳は、ふたつの感情、ふたつの思考、合計「4つのキャラ」のシェアハウスだ。

たとえば、心と頭が別々のことを言っているときは、脳の異なるキャラ同士が争っている。

キャラたちが、ひとつのチームとして協力し合えば、心穏やかな人生が手に入る。

脳は、今でも進化の途上にある。私たちは、何かことが起こったときに、感じ、考える回路を何度も使ううち、その回路だけが発達してしまい、ほかの回路を作動させることができなくなっている。

けれど、それを知って、別の回路をはたらかせることができるようになれば、いつもの自分の考え方や感じ方のパターンとなっている嫌なクセを変えられるのだ。

脳科学の分野の「4つのキャラ」と、ユング心理学の「4つの元型」は符合すると、著者は言う。

本書は、脳科学と心理学を融合させ、自分自身の力で、自分の「脳」を動かし、なりたい自分になる方法を教えてくれる。

まえがき 心の安らぎはすぐそこにある
第一部 脳のなかをちょっと覗いてみる
第1章 私の物語、私たちの脳
第2章 脳の構造と人格
第3章 脳を支えるチーム―四つのキャラクター

第二部 あなたの四つのキャラ
第4章 キャラ1 考える左脳
第5章 キャラ2 感じる左脳
第6章 キャラ3 感じる右脳
第7章 キャラ4 考える右脳
第8章 脳の作戦会議―安らぎのための強力なツール

第三部 人間関係における四つのキャラ
第9章 自分自身とのつながり―四つのキャラと体
第10章 ほかの人たちとのつながりー―恋愛関係における四つのキャラ
第11章 分離と再連結社会との断絶と結び直しー―依存症に立ち向かう四つのキャラ
第12章 この百年をふり返るー―四つのキャラと世代とテクノロジー
第13章 完璧で、ありのままで、美しい

著者について
ジル・ボルト・テイラー
神経解剖学者。1996年、37歳のとき脳出血により左脳の機能をすべて失った。8年のリハビリの末、身体、感情、思考すべての脳機能を回復させた体験を語ったTEDトーク(2008年)は、これまでに2800万回以上視聴され、伝説の講演となっている。体験記『奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき』(新潮社)はベストセラーとなった。本書は、その実践編とも言える著者の2冊目の著書である。現在は、ハーバード大学脳組織リソースセンター(ハーバード・ブレインバンク)のナショナル・スポークスマンとして、重度の精神疾患の研究のために脳組織を提供することの重要性について、啓蒙活動を行っている。

竹内 薫
理学博士、サイエンスライター、サイエンス書翻訳家。1960年生まれ。東京大学教養学部、理学部卒業。カナダ、マギル大学大学院博士課程修了。さまざまなメディアで科学の普及活動を精力的に行っている。おもな翻訳書に、J.B.テイラー『奇跡の脳―脳科学者の脳が壊れたとき』(新潮社)、P.ナース『WHAT IS LIFE? 生命とは何か』(ダイヤモンド社)などがある。

「人の脳を実験することって難しいと思うのですが偶然に機能について分かったこと。についてとても興味深かったです。脳内会議とか漫画でありますが、実際もそうだったのかと納得。あと、生物として進化過程で手に入れた能力の順番が面白いなぁと思いました。まぁ爬虫類的なのが最初なのは納得ですが次のを手に入れたのが幸せなのか不幸なのか生存に適してるのか。自分のことだから神様に文句言いたくなったり。面白い本でした。」

「脳の中に4つの人格がある、という考え方を知り、人間関係がすっきり「見える」ようになりました。
・論理的で正義漢のキャラ1
・感情的でネガティブになりがちなキャラ2
・楽天的でときに暴走するキャラ3
・悟りの境地のようなキャラ4
ユング心理学の性格診断も占いみたいで楽しいけれど、こちらの本に出てくる4つの性格をフィルターみたいにして周りの人を観察してみると、こちらの次の出方が決めやすくなる。
キャラ2が強くて感情的な人には、同じキャラ2で対応するとこじれるので、いったん離れて冷静になり、「脳の作戦会議」。この場面ではどのキャラで対応するのが最適か考え、答えが出るまでは静かに内省する。
いつも脊髄反射的に対応しがちな私にとって、感情と思考のコントローラーを手に入れたような気持になれる本でした。」

「「奇跡の脳」に感じられた、直感的に読める書物かといえば、少し性格を変えたタイプだと思える。
ざっと見て、目に飛び込んで強烈に飛び込んで来る箇所が、前作にはいくつもある。
今作は、どうだろう。
また、著書の内容というわけではないが、訳にある語句に、いわゆる今風な言葉が選ばれていることが気になった。
バズる、キャラ、といったような。
当たり前に使われているのかもしれないが、内容の性質に合っているのかは、気になる点だった。
これらが訳者の意図なのか、編集サイドの戦略なのかはわからないが、これらが気になって頭に入りづらい気がするのは、こちらの問題だろうか。
キャラと聞くと、何か意図的に演じている自分に負わせた役割のようなニュアンスを感じるのだが、この本では、それは単純にキャラクターの省略形として用いられているのだろうか?
などというような齟齬を感じて、作者の性質と、この言葉遣いが合っているのか、なども気になってしまうのだった。

内容は、もう少し見てみたいと思う。」


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