この冷たい世界で、ぼくたちだけはおたがいをほめあって生きよう。
30歳・大手ネット通販の巨大倉庫で働く堅志と28歳・スーパーのパート勤務の日菜子はそう約束している。
合わせて年収300万円台の暮らしは、つましくも幸せだった。
だがある日、堅志に正社員登用の話が舞い込む。
喜ぶ二人だったが、本社研修の担当は堅志のかつての恋人・佳央梨で……。
恋愛小説の名手が描く現代の切実な恋の行方。
本日発売、石田衣良『清く貧しく美しく』(新潮文庫)の巻末解説を執筆しました。巨大倉庫勤務の30歳の堅志と、スーパーのパートの28歳の日菜子の恋愛物語。著者が「普通」の恋愛小説を書いた…と驚きのめり込まされたものの、ざらっとした後味が残る。ざらっ、の部分に恋愛の怖さが宿っていました。 pic.twitter.com/vWNV2KjBAd
— 書評を読む。吉田大助 (@readabookreview) October 28, 2022
「読んでいて、思わず涙が出てきたり、堅志と日菜子を応援したくなる。しかし、堅志は世界的な通販会社の幹部になるチャンスを自らの意思で2度に渡って投げ捨ててしまう。若いうちはいいが、著者は二人のどのような将来を描いているのだろうか。堅志はアルバイトをしながら、作家の道を進んでいくのだろうか。また日菜子はレストランを経営していくようになるのだろうか。著者には、50歳、60歳となり、さらに老後を迎えた二人がどのような生活を送っているのか、是非とも書いていただきたい。と言うわけで、続編を期待しております。」
「面白くて一気読みでした。若い人にはイライラするかもしれませんが(笑)、キモは「結局人はそんなに変われない」という事だと思います。ネタバレしますが、主人公が喜んで一流企業にするような人物ならば、そもそも最初からこの2人は付き合っていないと思います。これは女性も同じで、言い寄られた男に簡単になびくようであれば、やはり、この2人は最初から付き合っていなかったでしょう。そういう意味では予想地点に落ち着いた無難な結末で、意外性はないですが、ある程度人生経験を積んだ方であれば納得する良いラストでした。どなたかが書いていらっしゃいましたが、続編書けそうですね。期待しています。」
「久しぶりに買った小説。私は登場人物達と比べて貧しくはないと思うけれど、親しい人との間にすら、住む世界が違うと感じてしまう所に共感できた。ハッピーエンドじゃないけど、読後、心が少し暖かくなった。多くの人に届きますように。」
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