こわされた少年 D・M・ディヴァイン (著), 野中千恵子 (翻訳) 東京創元社 (2025/2/19) 1,320円

まさに英国本格推理の精華

捜査小説×犯人当て

成績優秀な少年はなにゆえ姿を消したのか?

残された家族、同級生、そして教師……

歪んだ人間関係から浮かび上がる衝撃的真相

全作翻訳刊行を記念し入手困難の傑作を復刊

16歳の高校生イアンは霧の濃い午後、自転車で学校を出たのを最後に消息を絶った。

単なる家出とも思われたが、姉アイリーンの依頼でニコルソン警部の指揮のもと捜索が始まる。

捜査の過程で家庭の事情や轢き逃げ事件へ関与した疑いが明らかになるが、行方はいっこうにつかめない。

少年に何が起きたのか? 犯人当ての名手ディヴァインが読者の盲点を鮮やかに突く傑作本格ミステリ!

解説=楠谷佑

著者について
D・M・ディヴァイン

1920年スコットランド生まれ。大学職員時代、英国有数のミステリ出版社コリンズ社の探偵小説コンクールに投じた『兄の殺人者』がアガサ・クリスティから高く評価され、執筆活動に入る。デビュー以降もアントニイ・バウチャー、H・R・F・キーティングら具眼の士より絶賛される、極めて完成度の高い本格作品をものした。死後出版の『ウォリス家の殺人』を含め、その生涯で13作の推理小説を発表した。1980年没。

野中 千恵子
1938年生まれ。東京外国語大学英米科卒業。翻訳家。訳書にリンスコット「推定殺人」、オームロッド「左ききの名画」、ディヴァイン「兄の殺人者」「五番目のコード」「こわされた少年」、パーマー「ペンギンは知っていた」などがある。

「入手かなり困難本。倒産した社会思想社で出版され絶版状態。D・M・ディヴァインは巧い人で,この作品も誰がやったのか?怪しい人物が次々と出てきてなかなか絞らせない。失踪した弟は殺されたのか?の謎も続く。原題は「彼が約束した日」の意だが,水曜日に決まって起こっている事柄がキーになっているので,そこに着目すると面白い謎になっているのに気付く。狭い人間関係の中,人物の性格の書き分けもきっちりしている。主人公があまりに「お嬢さん」で空回りしているような。初期は結末はこんな感じか,という。犯人の意外性はありいいと思う。」

「面白かった。失踪した少年を捜索する前半はやはり地味な展開ではあるものの、複雑な人間模様が少しずつ解きほぐされていく過程が優れた筆運びで描かれており、まるで退屈しない。奥行きのある人物造形によって意外な犯人に説得力が与えられているのも流石だ。手掛かりとミスディレクションとのバランスが良く取れていると思う。結末は決して爽やかとは言えず微妙に感じるが、印象に残るものではあるだろう。この作品も何とか復刊してほしいところだ。」

「ああやはりディヴァインは凄い。結末近くの鍵の手掛かり、これは即ち暗然のうちに「犯人は○○」という縛りすらも無効化してしまうものであるのに、それに気付かず赤いニシンに引っ掛かってしまった自分がいっそすがすがしいと思ってしまうくらい凄い。何というか、手掛かりそのものは実直というか単純なのだけれども、その扱い、取り上げ方が本当に巧みなのだ。なお、今回もディヴァイン名物「ひねくれた男×元気(短気)な娘」の構図は健在だが、着地点はいつもと違う。だが、いつにも増して遠回りでも幸せになってほしいと思う。」


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