共謀罪、始動。標的とされた若者達は公安と大企業を相手に闘うことを選ぶ。
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。
動いたのは警視庁組織犯罪対策部。標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。
四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。
ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。
誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。
所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。
一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。
千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。
そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった――。
太田愛『未明の砦』読了
大手自動車メーカーの工場で働く四人の非正規工員がグローバル企業と公安を相手に闘いを挑む社会派群像劇
ただただ面白かったの一言
下手な感想よりも、「面白いから読んでみてね」とだけ伝えておきます
脳内でも十分映像化は楽しめたが
「日曜劇場」でドラマ化して欲しい pic.twitter.com/Y9bWvVo1sV— しなっちょ。’24@小説とカフェとスイーツ (@shinattyo1976) August 2, 2023
自分の生きる社会はもちろん、自分の人生も自分で思うようにはできない。
見知らぬ多くの人々の行為や思惑が作用し合って現実が動いていく。
だからこそ、それぞれが最善を尽くすほかないのだ。共謀罪始動の真相を追う薮下。
この国をもはや沈みゆく船と考え、超法規的な手段で一変させようと試みるキャリア官僚。
心を病んだ小学生時代の友人を見舞っては、噛み合わない会話を続ける日夏康章。
怒りと欲望、信頼と打算、野心と矜持。
それぞれの思いが交錯する。
逃亡のさなか、四人が決意した最後の実力行使の手段とは――。
最注目作家・太田愛が描く、瑞々しくも切実な希望と成長の社会派青春群像劇。
第26回大藪春彦賞受賞作。
太田愛さん『未明の砦』読了です。さすが太田愛さん!!と賛辞を贈りたくなる、重厚な社会派小説。
「フィクションだとしても、これに近いことが本当にあるなら日本はもうダメなんでは……」という、これは『天上の葦』を読んだ時にも思ったことです。同様の怖さがあります。… pic.twitter.com/W51818aodB
— かわぺい@読書垢 (@MYrkQjgfBQWvVy3) August 7, 2023
「4人の若き非正規工員が声をあげた。それは”生きやすい世界”を求めて、新しくユニオンを。人の命が軽んじられる世の中で、”俺たちは人間だ”と叫ぶ。会社に従順な労組の実態。あらゆる手段を使い阻止・妨害行為が。私利私欲に走る社会の構図を探っていく。”怒りは希望である”と。」
「読んでよかった!この一言。労働とは、経営とは、労働者の権利とは、、色々考えた。天上の葦がすごく好きだったけど、並ぶ傑作。この国民不在の政治がまかり通る現代に、自分なら何が出来るかをすごい考えさせられた。大きなものに流され、せめても、と自分のことだけ考えて生きている自覚がある分、耳が痛い表現も沢山あった。労働者の権利獲得の各国の歴史にも触れることが出来て、追加自分でも色々調べてみようと思ったり、、この本だけにとどまらない影響力を持った一冊だと思う。」
「新聞の書評を読んで、初めての作家だったけれどふと読んで見ようかと。結果四晩で一気に読み抜いた。久しぶりだった。主人公の3人はスーパーマンでもなくヒーローでもない自動車工場で希望もなく働いている派遣、季節工員だけれどあるきっかけで自分たちの置かれた立場を知りたった3人の労働組合を作り闘い始める。彼らを支える決して多くはない人、そして表立っては支持を表明できない人彼等の要求に自分達自身の希望を自覚する人たち。厳しい現実の中に希望を育てる。そんな読み応えのある小説を久しぶりで読んだと思います。」
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