たとえば、葡萄 大島真寿美 (著) 小学館 (2022/9/16) 1,980円

直木賞作家が描く、「今」と「これから」

まったく先の見えない状態で会社を辞めてしまった美月(28歳)。

転がり込んだのは母の昔からの友人・市子(56歳)の家。

昔なじみの個性の強い大人達に囲まれ、一緒に過ごすうち、真っ暗闇の絶望の中にいた美月は徐々に上を向く。

誰の心にも存在する将来への恐れや不安、葛藤……。

自分と格闘する美月を周囲の大人達は優しく見守る。

さりげなく、自然に、寄り添うように。

何度も心が折れそうになりながらも、やがて美月はひょんな出会いから、自分自身の夢と希望を見つけていく……。

現在の仕事に就くずっと前から、大島さんが描く、女性の生き方小説の世界が大好きでした。

大島さんにお会いしてからもずーっと「現代の女性の生き方小説をお願いします!」と拝み続け、いつも「心と頭が江戸時代あたりにあって、現代に戻って来れないのよ~」と笑い飛ばされる日々……。

でも、ある日、扉は突然開きました。「今、今なら書ける!今はこの小説を書かなければいけない時期!」と奇跡のような言葉が。

何の確証もないまま、電車に揺られて山梨のワイナリーに取材に行ったのでした。

そこからは奇跡の連続でした。大島さんの中には、16年前の「あの」人々がずっと生活をして歳を重ね、自分達の人生を歩いていたのです。

直木賞作家・大島真寿美さんにとって、実に12年ぶりの書き下ろし作品。

さらに、作家生活30周年記念作品でもあります。

初稿を読んだときは胸が一杯になりました。

すごくさりげなく、でも人生に大切なことがたくさんたくさん詰まっているからです。

大人、かくあるべし。

是非、この心地よい小説世界にどっぷりと浸かってください。


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