
メジャーに“置いて行かれた”プロ野球の年俸 過去40年で広がった「絶望的な格差」
年俸格差は開く一方
契約の額は総額であり年毎に違いはあるが、単純に総額を契約年数で割ると1年1700万ドル(約21億7000万円)となります。
鈴木の昨季年俸は3億1000万円であり、実に7倍の給料を勝ち取っています。
これに関し、かつて日米で活躍した上原浩治氏もメジャーとNPBの「年俸格差」を懸念していることが話題となったのですが、果たしてかつてと比べどれほど“差”がついたのでしょうか。
1980年からの40年間を10年ごとに区切ってリーグの最高年俸選手と平均年俸を調べたところ以下のようになりました。
※カッコ内のチーム名は当時の所属。
【1980年】
■MLB
最高年俸選手:ノーラン・ライアン(アストロズ)/100万ドル(約1億3000万円)
平均年俸:14万3756ドル(約1800万円)
■NPB
最高年俸選手:王貞治(巨人)/8160万円
平均年俸:602万円
【1990年】
■MLB
最高年俸選手:ロビン・ヨーント(ブルワーズ)/320万ドル(約4億100万円)
平均年俸:57万8930ドル(約7400万円)
■NPB
最高年俸選手:落合博満(中日)/1億6500万円
平均年俸:1527万円
【2000年】
■MLB
最高年俸選手:ケビン・ブラウン(ドジャース)/1571万4286ドル(約20億1000万円)
平均年俸:199万8034ドル(約2億6000万円)
■NPB
最高年俸選手:イチロー(オリックス)/5億3000万円
平均年俸:3269万円
【2010年】
■MLB
最高年俸選手:アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)/3300万ドル(約42億2000万円)
平均年俸:301万4572ドル(約3億9000万円)
■NPB
最高年俸選手:イ・スンヨプ(巨人)/6億円
平均年俸:3836万円
【2020年】
■MLB
最高年俸選手:マイク・トラウト(エンゼルス)/3766万6666ドル(約48億2000万円)
平均年俸:389万ドル(約5億円)
■NPB
最高年俸選手:サファテ(ソフトバンク)/7億
平均年俸:4174万円
FA残留すれば美談のように感じられるがプロ野球選手の年俸が上がらないひとつの要因になっている。かたやMLBは放映権料収入が右肩上がりで移籍市場も活発(ここ数年は停滞気味だが)。NPBとMLBの年俸格差はますます広がるばかりであることにどれだけの人が気づいているのだろうか。
— Falcaokubo (@falcaokubo) November 24, 2021
野球にとどまらず日米間の経済格差が
1980年は平均年俸こそMLBが約3倍と差が開いていますが、最高年俸選手は王貞治とノーラン・ライアンにあまり差はなく、そこまで日米で年俸格差はないように見えます。
ここでは10年ごとの数字をサンプルにして比べているためデータとして出してはいませんが、1987年のNPB最高年俸選手は“バリバリのメジャーリーガー”として鳴り物入りで来日し、93試合で31本塁打を放ったボブ・ホーナー(ヤクルト)の3億円。
そしてMLBはジム・ライス(レッドソックス)の241万2500ドル(約3億1000万円)と、現在のレートで計算するとほぼ同等です。
日本はバブル経済の真っ只中とはいえ、当時は世界最高峰の選手を呼ぶだけの資金力があったといえるでしょう。
しかし、それ以降を見ると1990年はヨーントが落合の約2.5倍、2000年はブラウンがイチローの約4倍、そして2010年はロドリゲスがイ・スンヨプの約7倍、2020年もトラウトがサファテの約7倍と開いていきます。
平均年俸も1990年はMLBが約5倍、2000年が約8倍、2010年が約10倍、2020年が12倍とみるみるうちに差が広がっているのが見て取れます。
先述した鈴木の給料を例にとってもいかに年俸が上がっているかが分かります。
今から約20年前のMLBの大型契約を振り返ると、メジャー屈指のスター選手バーニー・ウィリアムス(ヤンキース)が1999年に結んだ契約が7年総額8750万ドル(約111億9000万円)。
1年平均で換算すると約16億円で、約21億7000万円の鈴木の方が6億円近くも上回っているのです。
しかし鈴木の平均年俸は現在のメジャーリーグ全体で見ると70番目付近と決して上位には含まれません。
一方、イチローの2000年の年俸5億3000万円は今年のNPBの年俸ランキングに入れても6位と上位に位置しているのです。
NPB選手の年俸が伸びないことについては様々な要因が絡みますが、決してプロ野球界だけの問題ではないでしょう。
日本の名目GDP(国内総生産)に目を向けると、2000年からずっと横ばいの状態が続いている一方、米国は2000年と今年の推計を比べると約2.5倍となっています。
今シーズンMLBで最も年俸の高いマックス・シャーザー(メッツ)の4333万3333ドル(約55億4000万円)と、2000年のブラウンの1571万4286ドル(約20億1000万円)を比べても約2.8倍となっており、国内の経済状況とスポーツ選手の給与が多少なりとも連動するのは否定できません。
野球のニュース見ててもメジャーとプロ野球の年俸格差が開き続けてきてて、長期デフレを感じずにはいられないです
— きときと (@toki_nomi) November 9, 2021
企業努力もメジャーのほうが上
ただし、国の経済的な成長だけが日米の年俸格差を招いているわけではありません。
メジャーリーグ機構は全国放送の映像を一括で管理しているという利点もあるのですが、いち早くネットで全チームの試合を視聴できる『MLB.TV』というサービスを立ち上げ、年俸高騰の大きな要因となっている放映権の価値を高めてきたのです。
また、海外では米国に限らず、ネットでスポーツ中継を見ながらベッティングをしたり、ファンタジーベースボールというゲームを楽しむ文化もできており、これも放映権料を押し上げる要因の一つとなっています。
そういった意味でも米国はスポーツをビジネスに結びつけるのが上手いといえます。
そして、シーズン前の労使交渉でも顕著なのですが、選手たちもその球団が生み出した利益を少しでも多く分配されるように地道な交渉をいといません。
こういったことが重なり、メジャーでは選手たちの年俸が上がり続けているのです。
今後もこのトレンドはなかなか変わらないように感じますが、やはり“夢”を売るプロ野球という職業なだけに、日本の選手たちの給料も上がって欲しいとも思います。
米国のMLBと日本のNPBの年俸格差が此処まで拡がってしまったのは、もちろん国力の衰退もあるんだけど、巨人を中心とした人気チームが既得権益を手放さなかったから全体の進歩を妨げていた結果でしょう。これから更に優秀な選手の草刈場になっていくと思う。
— トタンの雨音 (@MoonStoneJP) March 28, 2022
ネットの声
「利益構造として、アメリカはペイビューが一般的で、ペイビューにとっては、野球やバスケットボール、アメリカンフットボールといったスポーツは今みることに意味のあるコンテンツとして価値が高く、放映権が極めて高く売れるといった構図。日本でもペイビューはあるものの、お金を払ってまでスポーツを見ようと思う層が少ないというだけ。アメリカでもそのような利益構造に乗っていないマイナースポーツは当然、お金はいかない。
あくまで、利益構造にうまく乗っているかどうかの問題で、そもそも野球選手の給料は高いべきでが日本でも年俸がもっと高くすべきというものでもないと思う。」「まぁメジャーと比較すりゃそうなんだろうが、所得が伸び悩んでる国内経済の範疇で考えればこんなに給料うなぎ上りの業界はそうそうほかにない。トップ選手は別にして業界内の全選手の待遇を見れば、ほかのスポーツと比較してもほぼ独り勝ち。MLBとの格差は絶望的かもしれんけど、あっちはあっちで放映権バブルなんじゃないのという気がしないでもない。」
「基本内向き思考で理由つけて球団数のエクスパンションにも否定的だからね。MLBはリスクとって拡大しているしね。今後もさらにチームを増やすとして、32チームにする意向をしめしているし、拡大しないリーグとチームを増やすリーグでは事情がかわる。」