免許センターの”一発試験”は誰のためにあるの?

自動車普通免許の「一発試験」は誰のため?合格率10%以下なのに存在する理由

自動車の免許を取得しようとするとき、まず真っ先に思い浮かべるものは、教習所に通う方法でしょう。

しかし、取得方法には「一発試験」というものも存在します。非常に合格率が低いことで有名ですが、なぜこのような試験が設けられているのでしょうか。

一発試験の合格率は10%以下になるケースも

一発試験とは、教習所に通って教習を受けることはせず、運転試験場や運転免許センターに直接出向き、その場で学科・技能試験を受ける方法です。

試験の主な内容は、「仮免許学科試験」、「仮免許技能試験」、「学科試験」、「技能試験」の4つであり、合格後は「取得時講習」の受講が必要です。学科の内容は教習所と同様であり、技能試験ついても、縦列駐車やS字クランクなど、試験内容に差はありません。

ですが、合格率は普通一種の場合10%以下と、非常に低くなっているのです。

試験内容には差がないのに、なぜここまで合格率が低くなっているのでしょうか。

それは、一発試験における、技能試験の判定の厳しさが関係しています。

教習所では、学科教習26時間、技能教習34時間(MTの場合)のなかで、教官からのフィードバックをもらいながら、運転について学んでいくことができます。

しかし、一発試験は教習を受けずに試験に臨むため、運転技術・知識をある程度持っている状況でないと、合格するのはほぼ不可能なのです。

また、試験官は「警察官」が務めます。試験官は自動車警ら隊や白バイ隊員としての経験を持っていることが多いため、非常に厳格な審査基準が設けられています。そのため、初心者には非常に厳しい試験と言えるでしょう。

一発試験を受けるメリットはあるのか

非常に難易度が高い一発試験ですが、実はメリットもあります。

教習所の場合、免許取得にかかる費用は30~35万が相場となっています。

一方で、一発試験では、仮免許からでも合計3万円以下となっており、かかる費用は教習所の10分の1程度。

つまり、一発試験に1回で合格することができるのであれば、30万円以上を支払って教習所に通う必要はありません。

また、教習所と比べて、取得までの時間が非常に短い点もメリットと言えます。

教習所では、免許取得までは1ヵ月以上かかることも多く、合宿免許を利用しても最短で約2週間かかります。

ですが、一発試験は全て1回で合格することができれば、1週間もかからずに取得することが可能です。

非常に安く、そして素早く免許を取得することができる試験であることから、毎年非常に多くの人が受験しているのです。

あくまで過去に運転歴のある人の「救済措置」

免許取得までの費用や日数を考えれば、一発試験は非常に魅力のある試験であると言えるでしょう。

しかし、関係者から話を聞いてみると、特に運転初心者の場合、安いからといって受験するのは得策ではないとのことでした。

教習所の教官は以下のように話しています。

「過去に運転歴のある人が受験したとしても、普通一種の判定基準はとても厳しいため、一発試験に合格するのは難しいです。そして受験者の大半を占めるのは、運転歴のある人です。そのなかで初心者が1回で合格するのは至難の業でしょう。運転技術・知識が不十分な初心者は、車に乗り込んで発進するまでの間に不合格になると思います。
また、地方の場合、一発試験の受験場所が限られているため、受験費・交通費が積み重なって、結局30万円近くかかってしまうケースもあるようです。」

実際、一発試験では80%以上の人が、免許失効や免許取消、更新し忘れ、免許切替という理由で受験しています。

受験者の大半が、ある程度運転に関する技術や知識を持った人たちということです。

つまり、過去に運転歴のある人が、なんらかの理由で再取得をしなければならない場合の「救済措置」になっていると言えます。

だからといって、初心者が受験してはいけないということではありません。

受験者には、初心者が一定数いるのも事実です。

しかし、初心者が合格するのは、非常に難しいという現状もあります。

一発試験は運転の「試験の場」であり、「教える場」ではないことを理解する必要があるでしょう。

特に初心者にとっては、非常にハードルの高いものとなっています。

だからこそ、技術や知識がない初心者にとっては、教習所で学ぶメリットは大きいものがあります。

初めて免許を取得しようとする場合は、多少費用が高くなっても、教習所に通う方法がベストと言えるでしょう。



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