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実はブラック？安定の職業と思われた歯科技工士の闇

実はブラック？安定の職業と思われた歯科技工士の闇

「5年で7割辞めると言われる」歯科技工士、止まらない収入の二極化に「このままでは絶滅の危機」

歯科技工士という職業をご存じでしょうか。

歯科医師の指示書に従い、歯のかぶせ物やインプラントなどの作成や加工を行う技術者のことです。

国家資格が必要で、厚労省「令和2年衛生行政報告例」によると、約3万5000人が働いています。

しかし、その実態について、警鐘を鳴らすのは、医療法人誠真会しげなが歯科医院事務長・技工室長の重永応樹さん。

「このままではなり手がいなくなる」と危機感を募らせます。

その理由とは？

過酷な労働環境

虫歯の治療に欠かせない金属やセラミック。

その製造・加工を任される歯科技工士が過酷な労働環境に置かれている。

「今、歯科技工士は5年で7割辞めるとも言われています。労働環境もあるし、報酬面の問題もある。技術者のメイン世代は40代後半～60代。年々なり手が減少し、このままでは絶滅の危機と言わざるを得ません」

重永さんは、20歳で歯科技工士の資格を取り、現場で25年以上のキャリアを持ちます。

これまで1万5000人以上の患者に携わってきました。

なぜ今、この業界の離職率が高いのでしょうか。

「離職率が高い技工士さんは、保険治療対象のつめ物やかぶせ物、入れ歯などを作る人。時給換算すると、コンビニ店員より安い人もいます。他方、全体の10～15％のセラミックやインプラントを作っている人は比較的仕事を続けていく収入は得られている」

金属やセラミックの技工物は、一つ一つがオーダーメードで作られます。

模型から完成までの工程は、いずれも非常に手間がかかる作業です。

しかし、金属のつめ物やかぶせ物は1個あたりに歯科技工士が手にする収入が「1500円ぐらいから3000円ぐらい」と抑えられているのです。

そのため、どうしても数をこなすことになり、「多くの技工士さんは1日10～15本作っている。金属以外の材料や器具機材などは自腹なので、取り分はかなり少ない」そう。

技工士全体のなかで、個人事業主は過半数と割合が多いため、制限なく働きがち。

「実態はかなりブラックです。圧倒的な長時間労働に陥っている方が多い。私が若いころは週末など徹夜が当たり前だった」

と、話します。

収入も二極化

一方で、セラミックは製作時間はかかりますが、1本あたりの収入が「2～5万円ほど。単価が違う」と、大きな開きがあります。

多くの歯科技工士が製作を希望するものの、そのハードルは高いようです。

自由診療のセラミックは患者の金銭的負担が大きいため、そもそも数が多くありません。

また、製作にも高い技術と経験が必要だというのです。

「歯科技工士の国家資格を取っても、実際にセラミックやインプラントを作る技術はほとんど学んでいません。専門学校を卒業後、個人でいろんな研修に出て技術を学ばないといけない。そこで大きく差がつく。自分は幸運にも自由診療を専門に学ぶ学校にも行くことができましたが、一般的にはそれらを学ぶ時間とお金をねん出できない現状があります」

結果、「歯科技工士の中でも二極化が進んでいる。一握りの豊かな技工士さんとの格差が埋まらない」と重永さんは明かしています。

「令和2年衛生行政報告例」によると、歯科技工士の年齢別の人数で最も多いのは「65歳以上」で、14．3％を占めます。

同じ歯科に携わる歯科衛生士が「25～29歳」から「45～49歳」にかけ、おおむね均等に分布しているのとは対照的で、高齢化が目立つのです。

直近10年の全体数に大きな増減は見られないものの、ゆゆしき問題といっていいでしょう。

技工学校で定員割れ…卒業生1ケタの学校も

「このままいくと、すでに一部で起こっていることですけど、どこの技工学校を見てもなり手がいなくなる。全国規模での定員割れが深刻な問題へと発展してしまう。卒業生が1ケタの学校も普通にあります。今は中高年の技術者の方が回してくれているのが現状。歯医者さんが技工物の製作をお願いしても断られるところもちらほら出てきている。歯科技工を依頼する先がなくなります」

歯科技工士にとって、直接的なクライアントは歯科医です。

その診療報酬が上がることが、待遇改善への近道になります。

国家規模の対応が求められるでしょう。

「歯科技工士の価値をいまいちど見直してほしい。歯科技工士は本来とても魅力的な職業。お口の中に装着された技工物は、見た目はもちろんのこと、咀嚼（そしゃく）機能や発語など、QOL（生活の質）の維持・向上になくてはならない技術。オーダーメードで“人口の臓器”を作ることの技術的価値と重要性に光を当ててほしい。それには待遇を改善するための予算を組んでいただく必要があります。業界の中では『歯医者が悪い』って言う人もいますけど、歯科医師が悪いわけではない。そもそも歯科医師の報酬が上がらないため、歯科技工士の報酬も上がらないという構造上の問題がある。歯科業界全体の抜本的な構造改革が待たれます」

と訴えていました。

ネットの声

「私の父は歯科技工士ですが、自営業なので休みはなく、忙しい時期には徹夜が続くこともあり、本当に大変な仕事だと思って子供の頃から見ていました。
阪神大震災以後は特に大変な状況が続いています。原料もどんどん値上がりし、本人も年齢を重ねて、とてもしんどそうです。大変な思いをして働いて来ても、老後は本当に厳しいので、なり手が少ないのはしょうがないと思います。日本は生活の根本を支える色々な人たちに対して、本当に優しくないと思っています。」

「日本の技術者は高いお金を出して理系の学校に進学して、長時間労働をしても事務系の方よりも報酬も地位も低い事が多い。
これでは理系は敬遠されて技術者不足がますます深刻になり生活に直結した影響が見える頃には手遅れになるのは必至。
円が弱くなり給与も他国より安い日本では外国労働者も流出する事態になる。
技術職の報酬や地位を向上させて、人材不足の分野の学費は無償化するなどしないと絶滅の危機から脱することは困難になる。」

「40代現役技工士です。リアルな記事ですね。この事実が多くの人に届くと嬉しいです。提起してくれて、ありがとうございます。一番の問題は、若者の成り手が少ない事。患者さんとの接点がもう少しあると良いのですが‥仕事はやり甲斐のある良い仕事です。しかし、私の同窓生の8割は離職しています。cadソフトの普及が目覚ましく、私も使っていますが、若者が物作りの手応えを感じでいるか、疑問です。離職は止まらない気もします。農政や漁業にも通じる、自由競争の無さが、イノベーションを妨げている。有資格者の独占業務にしているから、経済の需給バランスが働かない。歯科医も保険診療の縛りで悪戦苦闘している。高度な治療を安くやれ、と国から言われる。パラクラウンは、歯医者がほぼ赤字になります。アメリカの様に補綴物は自費オンリーにするべきだと個人的には思います。患者さんも歯医者さんも技工士もこれでやっとまともになると思います。」

「こういう話を聞くと納得はできますが、患者からしてみれば、歯科治療は保険診療でも高いと感じます。歯科診療が低いと言われても一般には理解できないと思います。自由診療は個々で決められるようですが、自分はやはり保険の範囲でお願いしてます。歯医者にもよりますが、何でもかんでも高額な治療を強制ではないですがすすめるところもあります。インプラントは一本30万から50万かかるみたいです。その上、内科的な検査も必要で、はっきり言って、金持ちの人しか一本の歯に高額金はかけれません。そう思うと予防が大切ということです。」



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