昔はATよりMTのほうが速いって言ってたけど…

ウデがないとギヤチェンジできない! 

しかし速く走るには最高! 

MTの「ドグミッション」って何?

マニュアルミッション(MT)車に関心はあるでしょうか。

最近はAT車が圧倒的に増え、MT車は趣味性の強いモデルとして、シフト操作をとおして走りの楽しさを実感したい人に支持される傾向が強いようです。

さて、気になるのはATとMTの性能比較ですが、一般的なトルクコンバーターを使ったAT方式なら、人間が手動で変速操作を行うMTのほうが高性能(=速く走れる)と言われています。

イージーさも速さもいまやMTに優位性はない

これは、人間が行う変速操作(クラッチペダル操作、シフトレバー操作)のほうが、トルクコンバーター式ATの変速操作より素早く動力の断続が可能であるためです。

走行速度の遅速が勝負の決め手となるモーターレーシングの世界で、MT方式が支持され続けてきたのはこのためですが、クラッチペダル操作/シフトレバー操作を不要としたDCT方式の登場により、モーターレーシングの世界でMT方式の優位性は失われることになりました。

人間の両手両足をフルに活用してクルマを走らせるMT方式が、ドライバー自身にクルマを走らせる充実感を味わわせていることは間違いありません。

しかし、逆にMT車を敬遠する理由のひとつに、ギヤチェンジがうまくできないという理由が挙げられます。

もちろん、ATが支持される最大の理由はイージーなドライブ性ですが、MT車のギヤチェンジがうまく行えず、ギヤチェンジのたびギクシャクとした不快な動きとなってしまうため、MT車が敬遠される理由のひとつとなっていることも見逃せません。

では、MT車のギヤチェンジがスムースに行えない理由はどこにあるのでしょうか。

多くの場合、単純にクラッチペダルとシフトレバーの操作のリズムが合わず、操作にさえ慣れれば問題なく走らせることが出来ると判断できるのですが、操作の習熟を踏まえた上でMT車が構造的に抱える問題点を考えてみましょう。

回転さえあれば瞬間シフトチェンジのドグミッション

というのも、MTにはギアチェンジをスムーズに行うため、シンクロナイザー機構が設けられているからです。

シンクロナイザー、つまり回転の同期機構ですが、トランスミッションはエンジンの回転を受け(入力)、それを適切な回転数に変換して駆動輪に伝える(出力)働きを受け持っています。

この適切な回転への変換がギヤチェンジで、内燃機関が持つトルク特性のためトランスミッションは必要不可欠な存在となっているのです。

さて、このギヤチェンジだが、トランスミッションは回転数の異なるギヤ同士を噛み合わせるため、たとえば2速から3速へとギヤを切り替えようとした場合、いきなりギヤの噛み合わせを変えようとしても、ギヤ同士の回転数が異なるためうまく噛み合わせることができません。

この異なる回転数のギヤ同士を噛み合わせるため、ギヤ同士の回転数を揃える調整機構(同期機構)が必要となるのです。

これがシンクロナイザー機構で、各ギヤにシンクロナイザーリングを装備し、シフトレバーが操作されるとセレクトされたギヤのシンクロナイザーリングが働き、摩擦力によってギヤの回転数が調整されることになります。

回転数が合ったところでギヤの噛み合いが可能となり、エンジン入力(回転数)を適切な回転数に変換した出力として駆動系(最終減速機構=デファレンシャルギヤ)に伝えることになります。

ドグミッションに注目が集まる

現在のMT車両は、全段にシンクロナイザー機構を備えた「フルシンクロミッション」が100%で、誰もが特殊な技術を要することなく変速操作を行えるようになっています。

しかし、厳密に言うと、シンクロナイザーリングが回転を調整するわずかの時間が必要となります。

一般公道走行では、ほとんど無視できる「時間差」なのですが、かつてはコンマ1秒を争う競技車両ではこの時間差を致命的と考え、シンクロナイザー機構を備えない方式が使われていました。

この方式は、現在でもMTの改造キット、変換キットとして商品化されている例を目にすることができます。

いわゆる「ノンシンクロ・トランスミッション」で、構造的にはギヤセレクター(セレクターフォーク)とギヤが噛み合うための結合機構がドグクラッチ(ドッグクラッチ=dog clutch)であることから、

このタイプのノンシンクロ・トランスミッションを「ドグ(ドッグ)ミッション」あるいは「ドグ(ドッグ)クラッチ」と呼んでいます。

回転数の同調機構がないため、シフトアップ/シフトダウン(とくにシフトダウン)の際は、通常の操作ではギヤが噛み合わず、回転数を合わせるためアクセル操作が必要となります。

ドグミッションは、ギヤ同士の回転が合わないとギヤが噛み合わない反面、回転が合ったときには驚くほどスムースに、しかも瞬時にギヤがつながるため、

操作技術(運転技量)があれば、素早いシフトアップ/シフトダウン(=速く走ること)が行えるミッションです。

MTに関する用語のなかで、あまり耳にする機会のない「ドグクラッチ/ドグミッション」ですが、現状は、走りにこだわるMT派のなかで注目度の高い方式となっているのです。

ネットの声

「トルコン式の多段ATはかなり進化してDCT並みに素早い操作が可能にはなったけど、やはりスポーツ走行となると限界が低かったりカスタマイズが難しかったりとデメリットもありますね。それでも街乗り領域ならDCTよりトルコンATの方が優位性が高くなりました。あとは好みとか趣味の範囲にはなりますが、街乗りでもMTを操る楽しさってわかる人にはわかります。」

「シンクロ付きのマニュアルでも回転数をシビアに合わせればシンクロ待ちをせずに叩き込んで一瞬で変速できるのですが…クラッチだって切る必要もなくシフトチェンジは可能。シンクロ付きの方が構造上回転合わせがシビアになるから難しいのと、ドグクラッチと比べると明らかに強度が低いので壊れやすい点で注意は必要ですが。」

「まあドグミッションのクルマには乗ったことないですが、、いつもバイクでやってることを手足逆で操作する感じですよね、そんな大変なのかなぁ、シフトパターンもバイクと一緒ですよね? 楽しそうではあるが。一度トラブルでクラッチ切れずに走ったことあるが、あれよりは楽だろうし。」

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