バイク復権なるか? 国内二輪市場の大転換について考える
公のデータによると、251cc以上のバイクの国内販売台数は、2022年前半で前年同期比32%増の5万1035台。
年間では1998年(10万4744台)以来の10万台超えになるとみられているそうです。
「若者のバイク離れ」に代表される、長年にわたるバイク業界の凋落ぶりからすると、考えられないほど好調です。
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コロナがきっかけ!?
要因として考えられるのは、まず新型コロナウイルスの影響。
密にならないパーソナルな移動手段として、また大人の趣味としてのバイク人気の高まりから、新規免許取得者が増えているそうです。
棚ぼた的ではあるのですが、時流にも合っているし、それはそれで悪いことではありません。
また、肌感覚ですが、最近は若者がバイクに戻り始めていると感じます。
1980年代のバイクブーマーだった世代が親になり、その子どもたちがバイクに乗り始めているのです。
バイクに理解のある親たちのもとで育った世代です。
それを実感したのが、今春3年ぶりに開催された東京モーターサイクルショー。
コロナ禍が下火になったタイミングとはいえ、まだまだ以前のマインドには戻らない状況のなか、来場者数は3日間トータルで12万3439人と、過去最高を記録した前回(2019年)の14万9524人の83%を集客しました。
もう数年前からですが、年季の入った革ジャンを着たコテコテのライダー姿(昔は革ツナギも珍しくなかった)は少なくなり、ラフな街着でふらっとやってきた風の若者や、おしゃれなライディングウエアを着こなした女性が高級ブランドの輸入車にさっそうとまたがる姿もよく目にするようになりました。
いい時代になったものだと思います。
バイクはいつでも若者文化の象徴であってほしいし、ジェンダーレスでエイジレスの時代にあっては老若男女を問わずどんどんバイクに乗ってほしいと思うのです。
$GGR CAGR31%以上の勢いで2027年までに世界で600万台近くに達すると予測されとる電動バイク市場 交換式バッテリーの台湾ゴゴロの商機はそこにあったりするEV電池自体はCATLの圧倒的シェアになる気もするけど pic.twitter.com/78MAPUkITV
— チャラス?????????? (@100manbaby) August 27, 2022
メーカーの元気は“ミニモト”から
往年の名車が続々復活。
ただ、近年は国産車も輸入車も高性能化に拍車がかかり価格も高騰するなど、バイクは若者にはなかなか手が届きにくいものになってしまった感があります。
それはそれで、四輪で言えばスーパーカーのように永遠の憧れとして必要ですが、庶民の足としての魅力あるバイクがたくさん競ってこそ活力が生まれるはず。
夏休みは原付で北海道までトコトコと旅してみたい、通勤通学にも使えるし渋谷にも遊びに行けそう……。
そんな若者たちの素朴な夢をかなえられる等身大のバイクが求められていると思います。
そのようななか、ホンダが東京モーターサイクルショー2022で初公開した新型「ダックス125」には連日ものすごい人だかりができていました。
近年でも「モンキー125」や「CT125ハンターカブ」など往年の名車が現代の技術で復活して大人気となったことは記憶に新しい。
かつて戦後の復興期に、雨後のたけのこのように浜松あたりに現れたあまたの国産バイクメーカーも、原付や小排気量モデルから出発して昭和の高度成長期を通じて世界的メジャーブランドへと羽ばたいていきました。
ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内4メーカーが“世界のビッグ4”と呼ばれるまでに成長した原動力は、生活に密着した実用車で培った優れた燃費性能や耐久性を含む、コストを抑えつつ品質の高い製品をつくり続けられる技術力だったのです。
それがベースにあったからこそ世界での競争に打ち勝って販売台数を伸ばし会社を大きくして、ついにはスピードと性能を競うレースの世界でも頂点へと上り詰めました。
その最高峰であるMotoGPを見れば、長年にわたって国産メーカーが常にトップ争いを演じてきた歴史が分かるはずです。
今年限りでスズキが撤退を発表しているのは個人的にはとても残念ですが、これも時流なのでしょう。
今後は二輪にもEV化の波が押し寄せてくると思いますが、そこでバイク業界はどこへ舵を切っていくのでしょうか。
ヤマハ・RZ250/350
250は400キラー、350はナナハンキラーと呼ばれた2stスポーツの先駆け。
その呼称が表す通りとてつもなく早い。
終わりと囁かれていた2stエンジンのポテンシャルを世間に知らしめ、その後のバイク市場がレーサーレプリカ一色となる遠因となった。 pic.twitter.com/DHCqTA6ATP— 適当に語るバイクbot (@henken_bike) August 19, 2022
国内二輪市場はどうなる?
EVも大歓迎、でも「ちょっと待った」の感もあるその先行きを暗示するような出来事が、最近ありました。
2022年4月に道交法改正案が可決されて、従来は原付扱いとされた電動キックスケーターが免許不要&ヘルメット無しで乗れるようになったのです。
2年以内に施行される見通しで、年齢制限(16歳以上)や速度制限(20km/h以下)などはあるのですが、ほぼ自転車並みの乗り物へと規制緩和されていくのです。
かつての屋台骨だった原付が売れず、環境問題やユーザーの意識の変化でEVなど環境負荷の小さい乗り物へと主役の座が移っていくのは仕方がないことです。
しかし、無防備な姿で小さな車輪が付いた板の上に立って乗るという、どう変えても不安定で危険な乗り物(バイク乗りであればその意味が分かると思う)が原付の代替えとなっていくことに関しては、どうも心がザワザワするのです。
それならば、ホンダやヤマハも新たに参入を進めていると思われる「足こぎペダルが付いた電動バイク」、つまりペダルをこいでもいいし電動モーターでも走れる“新たな電動バイク”の可能性を探っていってほしいと個人的には思うのです。
とはいえ、人類の英知が結晶したガソリンエンジン150年の歴史をこのまま葬ってしまうのはもったいない。
というかあり得ない。頭のいい人とテクノロジーの力でなんとかしてほしいもの。
あの騒々しい音と匂いに恋い焦がれて育った世代の人間としては、心底そう思うのです。