クルマのタコメーターの“タコ”ってどういう意味か知ってる?

なぜクルマの「タコメーター」はタコと呼ぶ? 8本足の蛸と関係アリ? 予想外な語源とは

一部のクルマには、エンジンの回転数を示す「タコメーター」と呼ばれるものが搭載されています。

普段、何気なく目にするタコメーターですが、そもそも「タコ」とは一体何のことなのでしょうか。

そういえば「タコ」ってなに?深い「タコメーター」の名前の由来

クルマには、「速度計(スピードメーター)」「燃料計」「水温計」などのメーター類が搭載されていますが、スピードメーターと並んで目にする機会が多いのが「エンジン回転計(タコメーター)」です。

エンジンの回転数を確認することが主な役割ですが、近年は比較的安価なモデルやハイブリッド車には搭載されない場合があり、一方、MT車には搭載されているケースが多く見られます。

これは、MT車では回転数に応じたシフトチェンジを手動でおこなうことが求められるため、エンジンの回転数を視覚的に確認できるタコメーターが、ドライバーにとって必要不可欠な存在であるからです。

また、スポーツカーはエンジンの出力をフルに活用するために、運転中にエンジンの回転数がどれほどなのかを知る必要があり、そのためにも重要なメーターとなっています。

このように、多くのドライバーにとって重要なタコメーターですが、そもそも「タコ」という名前の由来について知っている人はそれほど多くはありません。

英語のようにも思えませんし、海にいる「タコ(蛸)」であるとも思えませんが、いったい「タコ」とはなんなのでしょうか。

クルマのメーターやセンサー関連の開発・製造などをおこなう日本精機の担当者は「タコ」の由来について「『速度』という意味の古代ギリシャ語が語源とされています」と説明します。

古代ギリシャ語で「速度」は「TAXOS(タコス/機種依存文字のため英語表記)」とされており、それが英語に転じたさいに「tacho」となったと考えられますが、そもそも古代ギリシャ語の「タコス」が語源となった背景には、タコメーター誕生の歴史が深く関係しているようです。

クルマ以前からあった!?

諸説はあるものの、タコメーターの起源は1810年頃とされています。

当時は、クルマのエンジン回転数を測るためのものではなく、あくまでも「あらゆるものの回転数を測るもの」として誕生しました。

そんなタコメーターが活用されるようになったのは、鉄道が発達したためと考えられます。

当時の主要な移動手段は、徒歩や馬を利用したスローペースのものがほとんどで、そもそも現在ほどの長距離移動はあまり多く見られませんでした。

そのため、なにかの速度を測ったり、速度から所要時間や移動距離を算出するということ自体があまり一般的ではありませんでした。

ただ、1800年代初頭に機関車が発達しはじめたことで、以前にはなかった高速での移動が可能となり、目的地までの所要時間を測ったり、速度を計算したり必要が出てきたと考えられます。

そこで1840年頃から、タコメーターが機関車の速度を測るためのものとして用いられるようになりました。

蒸気機関の車輪回転数を計測することで速度も算出できるためタコメーターが重宝されることになります。

このことを考慮すると、タコメーターは現在イメージされているように、「エンジンの回転数を測るもの」ではなく、当時は「速度を測るもの」、つまりスピードメーターと同義であることがわかります。

したがって、“速度”の意味をもつ“タコス”が語源になったことも納得できます。

速度の意味を持つ「タコ」 スピード(speed)ではだめなの?

一方で、“速度”を表す英単語として、多くの人がイメージするのは「speed(スピード)」という単語です。

では、なぜ当時のタコメーターは、スピードメーターとは呼ばれなかったのでしょうか。

タコは速度を表すけど…「スピードメーター」とは何が違う?

実は、現在の意味での「speed」という言葉が用いられるようになってからの歴史は意外と浅く、確認できる限りでは1879年が初出となっています。

つまり、タコメーターの登場から半世紀以上も後のことになります。

前述の通り、当時は速度という概念自体があまり一般的ではなく、学術的な専門用語という位置付けであったと考えられます。

現在でもその文化は残っていますが、学術用語では古代ギリシャ語(ラテン語)を用いるのが一般的であり、その理由のひとつは「現在進行系で使われ方や言葉の意味が変わることが少ないため」とされています。

その後、鉄道や自動車の発達とともに、速度という概念が一般化したことで、より多くの人が理解しやすい「speed」という単語が用いられるようになったといわれています。

つまり、タコメーターの「タコ」とは、古代ギリシャ語の「タコス(速度)」が転じたものであり、古代ギリシャ語の「タコス」が用いられるようになったのは、当時は「速度」という概念自体が専門的なものであったことから、慣習にしたがって古代ギリシャ語が用いられたということのようです。

クルマ関連の用語には、その語源を調べてみるとおもしろいものが多くあります。

例えば、「クラクション」は和製英語であり、英語では「ホーン(horn)」と呼ぶのが一般的です。

では、「クラクション」とはなにかというと、かつてクラクション(ホーン)のメーカーであった「クラクソン」という会社名が転じたものといわれています。

ネットの声

「昔、バンのバッテリーが切れてジャンプスタートしようとしたときに、誤ってショートさせてしまたら計器類が故障して何故か水温計がタコメーターと同じ動きをするようになった。エンジンはかかったけど、エンジン回転にリンクして水温計がレスポンスよく動く光景はちょっとシュールでした。」

「古~いクルマで、タコメーターは付いてなくて速度計内に「この速度までは1速、ここまでは2速・・・」という表示があるものがありますが「これならタコメーターなくても大丈夫、頭良いなぁ」と思ったことがあります。・・・レースカーなどコースに合わせてギア比を変えるクルマには使えませんが。」

「やはりこういうところでもラテン語なのですね。学術表記の世界では一般的ですが。一方でラテン語は多数のヨーロッパ言語の元となっている。それを使うのは彼らのアイデンティティでもあるのかもしれません。」

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